公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.05.22 (月) 印刷する

北の奇襲に日本も反撃体制早急に整えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 21日夕方、北朝鮮は再び内陸部西側の北倉プクチャン付近から弾道ミサイルを発射した。ミサイルは日本海の日本の排他的経済水域外に落下した。米側の発表によれば、本年2月に発射された「北極星2号」同様、固体燃料が使われたと思われ、飛行途中で2つに分離したようである。
 先月の軍事パレード直後に筆者は、北朝鮮の弾道ミサイルを4つに分類した。その分類で、14日に発射されたロフテッド軌道の弾道ミサイル「火星12号」は噴煙の画像からして液体燃料によるKN-08改良型の2~3段ロケットのうち単一弾頭ICBM(大陸間弾道弾)であり、今回発射したのは固体燃料で、しかも飛行途中で2つに分離したことから2~3段ロケットで、ガス圧を用いて射出し、空中で第1段ロケットに点火するコールド・ランチ方式であった。22日に金正恩は本弾道ミサイルの大量生産と実戦配備を指示した。
 14日の「火星12号」は、液体燃料は注入に時間がかかるので、前日から起立させ、夜中に燃料を注入したようで、早朝に発射した。これに対して今回は固体燃料なので、これまでになかった夕方という時間帯を選び、しかも同じ西部地域とはいえ14日とは異なる場所から移動式ランチャーで発射している。いずれも不意を突く奇襲攻撃を企図した発射と思われる。

 ●イージス・アショアの導入急げ
 我が国の対策として筆者は、本年3月13日付で本サイトの「今週の直言」でも、陸上配備型のイージス・システムである「イージス・アショア」の追加配備を求めた。最近の防衛省発表で、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)ではなく、イージス・アショアの導入予定となったことは喜ばしい。
 その理由は、同じ米海軍のランチャーから敵地に反撃するための巡航ミサイル、トマホークを陸上からも発射できるという将来への拡張性があるからである。無論、地上レーダー・サイトは固定式であるため、敵からの攻撃に脆弱である。しかし、発射機さえ生きていれば、洋上のイージス艦レーダーと共同交戦能力(Cooperative Engagement Capability-CEC-)により、洋上のイージス艦レーダー情報に基づいて敵地を攻撃することができる。
 昨今の予想を上回る北朝鮮の弾道ミサイル開発に対抗して、早期のイージス・アショア配備が望まれる。