公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.05.24 (水) 印刷する

コミー氏解任を衝動行動と捉える誤り 島田洋一(福井県立大学教授)

 5月22日付の国基研「今週の直言」に「『トランプ弾劾』一色の報道に異議あり」と題する一文を書いた。
 以下、スペースの関係で割愛した部分を若干補っておきたい。上記「直言」と併せ読んで頂けると幸いである。
 コミー連邦捜査局(FBI)長官の解任は、トランプ大統領の独断ではなく、司法省からも解任を求める意見書が出されている。直言で触れたとおりである。
 セッションズ司法長官が、トランプ選対の顧問だったことを理由に、関連案件での指揮権を自ら返上したため、同意見書はローゼンスタイン司法副長官名になっている。ローゼンスタイン氏は、4月25日に94対6の圧倒的多数で上院で人事承認されており、決して党派的な人物ではない。
 5月18日、下院議員の会合に呼ばれたローゼンスタイン副長官は、あのメモは「私が書いた。内容を信じている。意見を変えるつもりはない」(I wrote it. I believe it. I stand by it.)などとした冒頭発言を行い、文書の形で公表している。

 ●「司法省全体の職権を簒奪」
 そこでは、次の点が改めて強調されている。
 「(コミー長官が行った作年)7月7日の記者会見は、深刻な誤りであり、司法省と(元国務長官の)クリントン氏の両者に対し公正を欠いたと思う。それは、司法長官、副長官、そして司法省全体の職権を簒奪するものであった。深く定着したルールと伝統を冒すものであった。そしてFBIが選挙に干渉したという非難を確実に呼び起こすものであった」
 コミー氏はこの記者会見でクリントン氏の私用メール問題について「訴追に相当しない」と発表していた。
 ローゼンスタイン氏は、数カ月前、セッションズ司法長官(予定者。当時は上院議員)と話し合う中で、「FBIの信頼性を回復し、司法省の確立された権限を守り、公的な発言を限定し、情報リークを排除する」ためには、FBIに新しいリーダーが必要だとの思いを強くしたと述懐している。
 こうした見解は、保守系メディアや評論家が累次述べてきたところでもある。コミー長官の解任を、トランプ大統領による刹那的、衝動的な行動のように捉えるのは誤りであろう。