サウジアラビア、エジプト、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメンのアラブ5カ国が5日、カタールと国交を断絶した。シリアやイエメンでテロ組織を支援したことを理由にしている。
カタールについて筆者は、2010年秋に防衛大学校の国際教育研究官として、防衛大学校と同国士官学校との学生交流を具現化するために単身訪問し、アラビア語履修防大生の数カ月間にわたる長期派遣を決めたことがあって個人的な思い入れがある。
●中東では数少ない安定国家
ペルシャ湾内のカタールは面積にして秋田県ほどの大きさで、小規模だが裕福な国である。政治・外交・文化面でも活発な動きが注目されており、例えばアラビア語と英語による24時間ニュースの衛星テレビ局アルジャジーラがあるほか、米国のジョージワシントン大学やブルッキングズ研究所等の施設も積極的に誘致している。
また中東和平や諸紛争地域の仲介を買って出るとともに、地球温暖化問題を討議するCOP18のような国際会議を誘致するなど外交は積極的である。イランとも、沖合のガス田がイラン領海と繋がっていることから良好な関係を保持している。
米国にとっては中東地域における空軍の根拠地があるが、今回断交に加わったバーレーンには米海軍第五艦隊司令部があることから、今回の断交は残念であるに違いない。
イラク復興支援時、航空自衛隊の隊員が米中央軍連合航空作戦センターに常駐した。2010年に筆者は、中東で他にエジプト、オマーン、トルコを訪問したが、帰国直後から始まった「アラブの春」により、ほとんどの中東諸国の政情が不安定化し、あるいは政変が起こった。そのことを考えると、中東で数少ない安定的国家であったカタールの選択は間違っていなかったと思っている。
●防衛大学校とも活発な交流
カタールの士官学校(Ahmed Bin Mohammed Military College-ABMMC-)は、首都ドーハから西に車で約40分、カタール国のど真ん中の砂漠に位置し、敷地は防大の約2倍ある。士官学校の名前となっているAhmed Bin Mohammedはカタール独立時の英雄である。当時、国際交流としては、リビア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン等の中東諸国からの長期留学生を数名受け入れていたほか、短期のみ欧米主要国とも実施していた。防大も2011年と2012年に、カタールから学生の短期派遣を受け入れている。
カタール側も日本との交流に意欲的で、士官候補生交流を行うには適切との判断から、2011年から防大のアラビア語を第2外国語として専攻している学生を2名派遣。3~4カ月間、士官学校に宿泊させ、ドーハ近郊の国軍語学学校でアラビア語を研修させた。
今回の中東5カ国の断交は残念ではあるが、中東におけるサウジとイランとの主導権争いに巻き込まれた感が否めない。