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2017.08.08 (火) 印刷する

新潟・佐渡に蔓延る「郷間」と「内間」 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 「郷間」と「内間」とは『孫子の兵法』用間篇第十三に出てくる5つの種類の「間」(間諜:Secret Agent)の最初の2つである。「郷間」とは現地に土着して情報をもたらす間諜、「内間」とは相手側に内通している間諜である。

 ●『孫子の兵法』にみる「間諜」の具体例
 日本は中国国内の土地・建物を取得することができないにも拘らず、日本では中国資本による国土の買収が続いている。7日から8日にかけて新潟・佐渡に1泊し、現地調査を行った。
 新潟市内には民主党政権時代に中国政府に土地・建物を買い占められた総領事館があり、佐渡には閉鎖された「道の駅」を1円で買って建てられた「新潟国際藝術学院佐渡研究所」が玄関口の両津港近くにある。研究所の理事長は2010年に佐渡を訪問した中国の唐家璇元外交部長に、当時の王華新潟総領事と共に同行している。2010年といえば、国の内外を問わず国防目的に中国人若手男 女を動員できる「国防動員法」が施行された年でもある。
 『孫子の兵法』の最後は次の言葉で締めくくられている。
 「昔、殷王朝が始まる時には(あの有名な建国の功臣)伊摯いしが(間諜として敵の)の国に入り込み、周王朝が始まる時には(あの有名な建国の功臣)呂牙りょがが(間諜として敵の)殷の国に入り込んだものである。(中略)この間諜こそ戦争のかなめであり、全軍がそれに頼って行動するものである」
 筆者が統合幕僚学校校長として訪中した2001年、人民解放軍総参謀部で間諜の大元締めである第二部長の熊光楷陸軍中将が対応したが、筆者が『孫子の兵法』の一節を口にすると彼は全文を暗唱しているように応じた。

 ●長野の聖火リレー暴行事件の教訓
 国防動員法が施行される2年前の2008年4月、北京オリンピックの聖火リレーが長野市を通過した際、沿道を埋め尽くした中国人による日本人らへの暴行事件が起きた。当時はチベット騒乱やギョーザ中毒事件で中国への厳しい視線が注がれる中、翌月には中国の胡錦濤国家主席の訪日が予定されていた。沿道には日本国内の中国人数千人が動員されたというが、その中には軍隊の指揮経験があるような者が市民の服装をしてリーダー役として紛れていた模様である。
 サイバー攻撃や情報操作などを組み合わせたロシアのいわゆるハイブリッド戦は、居住しているロシア人を支援するという名目の下、一般市民の格好をしたロシア特殊部隊がウクライナ東部を占拠して既成事実を作り上げた。同様に一般市民の格好をした人民解放軍の軍人が、国防動員法に基づいて日本国内の中国人を動員したらどのような結果になるのか?
 既に日本海の対岸にある北朝鮮の羅津・清津港を中国は数十年に渡って租借する契約を交わしている。こうした港から運搬した武器・弾薬を集積するとすれば、新潟国際藝術学院佐渡研究所は格好の地理的位置にあり、そして新潟から首都圏までは新幹線で僅か2時間の距離だ。
 政府はこれまで中国人のビザや永住権取得の簡素化、それに滞在日数を延長するような施策しか行なって来なかったが、少なくとも相互主義に基づいて早急に外国人の土地・建物取得を規制する法律は制定する必要がある。