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2017.08.02 (水) 印刷する

民進党よ、「辛抱」し「心棒」持つ政党に 梅澤昇平(尚美学園大学名誉教授)

 野党第一党が機能していないと議会政治は空回りになる。機能とは政権準備だ。
 民進党を見ていると、風まかせで漂流しているボロ船を想像してしまう。何のため、乗り合わせているのか。戦争末期に、海軍将兵は、乗っていた軍艦が沈没すると、他の軍艦に拾われ、それも沈没すると次という具合に敗残兵は、乗り移っていったと聞かされた。
 民進党は今回またぞろ党首選挙となったが、多くの議員や候補者にとって最大の関心事は、誰が船長になれば、目立ち、風が吹くか、であろう。前回も、誰と一緒に写ったポスターが見栄えがするかで、蓮舫氏が選ばれたのだ。
 彼女が当選直後に何と言ったか。「対案型、提案型の党」にすると。私は「保守の中の保守です」とも。結果はどうだったか。共産党と手をつなぐ「安倍叩き」に徹し、憲法論議も、対案なしで、論議を進めさせない真逆の姿勢だった。

 ●民共協力という禁断の実
 小選挙区制で、政党本位の政治が期待されたが、結果は逆向きだ。党によっては、党の理念や政策を磨いたり、党員を集めたりという基本作業すらやらなくなってきた。特に、この傾向は、新進党、民主党、民進党という野党第一党に顕著だ。それでも、鳩山由紀夫政権のように、風向き次第では政権にありつけるが、米軍普天間基地の移設先も、「最低でも県外」と出来もしないリップサービスで大混乱を引き起こした記憶はまだ新しい。
 蓮舫時代になっても、自民党との違いを強調するため「原発ゼロ法案」を口走り、党内や支持労組を混乱させたのは、この延長だ。癖は直らない。それに岡田克也代表時代から、共産党の術中にはまり、国政での選挙協力という禁断の実に手を出してしまった。
 問題はどこにあるのか。昔のテレビ・コマーシャルに「人間、辛抱だ!」という元横綱が出てくるのがあった。「政党もシンボーだ」と言いたい。「心棒」と「辛抱」である。理念、政策を磨いて政権準備をすること、党員を鍛えて「風雪に耐えられる政党」を作ることだ。

 ●カギ握る「連合」の決断
 英国労働党は、ブレア政権を勝ち取るまで18年間の野党暮らしに堪えた。この間、ブレア氏は労組依存型の党を作り変えた。新自由主義に対する「第三の道」に導いた。ドイツ社会民主党は、16年間の野党暮らしを乗り越えてシュレーダー政権を勝ち取った。それぞれ問題も抱えたが、長い「風雪の時期」に堪えたのだ。最低10年は「辛抱」する「心棒」を持つ政党を作らねば駄目だ。
 1つのカギは最大の支持組織「連合」にある。まず、共産党との共闘や原発ゼロに反発している産別が党改革を強く働きかける必要がある。参議院比例区議員として「人質」に取られているから身動きが取れないなどというのは言い訳に過ぎない。このままでは、産別で支援を決めても、一般組合員の民進党離れ、政治離れは進むばかりだろう。
 日本の状況は、こんな問題以上に深刻だ。北の弾道ミサイルがいつ飛んでくるか、政府広報で避難方法を呼びかけるという戦後最大のピンチである。その中で自衛隊の存在を憲法上、明確に位置付けるという最低限の措置すらとれていない現状。民進党がこれを率先して推進するというなら存在意義は大きい。民進党よ、もう遊びの時間は終了だ。