2024年11月の記事一覧
インドは途上国の反米化の阻止役 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
激変する国際社会において、インド外交に対する注目が高まっている。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」のメンバーであるインドは、一方でロシアの友好国であり、中国やロシアが主導する新興国グループBRICS、上海協力機構など、多数のミニラテラルの枠組みに参画している。新興・途上国「グローバル・サウス」のリーダーを自称するインドは2023年度の20カ国・地域(G20)議長国を務め、首脳会議で共同声明を出すこ...
トランプ政権復活を歓迎するインド 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
11月5日の米大統領選挙でトランプ候補がハリス候補に圧勝したのを受けて、インドのモディ首相は「両国国民の利益と世界の平和と安定のための『印米包括的グローバル戦略的パートナーシップ』の重要性を改めて認識し、技術、防衛、エネルギー、宇宙などの分野で二国間関係のさらなる強化に向けて再び一緒に緊密に取り組んでいくことを楽しみにしている」と祝辞を送った。 トランプ次期政権の主要人事がまだ発表されていな...
米国の戦前への回帰を警戒せよ 冨山泰(国基研企画委員兼研究員)
後世の歴史家が2024年の米大統領選挙を振り返る時、第2次世界大戦後に米国が民主主義世界のリーダーだった時代の終わりを確定する転換点だったと位置づけるのではないか。トランプ共和党候補(前大統領)のハリス民主党候補(副大統領)に対する完勝は、「米国第一」を外交の特徴とする「トランプ現象」が一時的なものではなく、トランプ政権の4年間の空白にもかかわらず、米国に深く根付いていることを示した。 孤立...
BRICS活用に失敗したプーチン氏 湯浅博(国基研企画委員兼研究員)
ロシアのプーチン大統領は、同国カザンで10月下旬に開いた主要新興国によるBRICS首脳会議で、ウクライナ侵略に対する免罪符の獲得に失敗した。プーチン氏は加盟国を5カ国から9カ国に拡大した「BRICSプラス」の初開催をテコに、欧米によるロシア孤立政策の「失敗」を印象付け、制裁解除の足掛かりにしようと目論んだ。しかし、「制限なし」の協力を侵攻直前に誓ったはずの中国から、逆に侵略戦争を終わらせるよう求め...
中国軍の台湾封鎖演習が持つ意味 中川真紀(国基研研究員)
中国人民解放軍東部戦区は10月14日、陸海空ロケット軍等による統合演習「聯合利剣‐2024B」(以下、「B」)を実施した。5月の「聯合利剣‐2024A」(以下、「A」)に続く台湾周辺における大規模統合演習である。 今回の演習も「A」と同様、台湾に対する海上封鎖が主要テーマであったが、展開戦力の質と量を増強させ、台湾及びそれを支援する米国等への政治的メッセージを含んだものでもあった。 短...
日朝連絡事務所は選択肢として排除すべきでない 荒木和博(特定失踪者問題調査会代表)
9月30日の「今週の直言」に有元隆志企画委員の寄稿した「石破自民党新総裁は『過去』から脱却を」で、「日朝連絡事務所設置構想は撤回せよ」との提言があった。これについては西岡力企画委員もたびたび主張しており、家族会を含めて拉致被害者救出運動の一致した立場だと考えておられる方が少なくないと思う。しかし、家族・支援者含め全てがそう考えているわけではないし、連絡事務所設置を頭から否定するのはいかがなものかと...
「高市氏は靖国参拝を公言して負けた」論に思う 西岡力(麗澤大学特任教授)
「高市早苗氏が首相になれば靖国参拝をするだろうから、中国でまたひどい反日騒ぎが起き、せっかく落ち着いてきた日韓関係がまた悪化する。このような懸念が自民党総裁選の最終盤に党所属国会議員の中に広がったことが、1回目の投票で1位だった高市氏が決選投票で逆転された大きな理由だ」と、政治評論家らが口々に語った。 私はそれを新聞で読んで心の底から悔しかった。私が人生をかけて戦っている歴史認識問題が原因で...
総裁選で変わらぬメディアの対応 石川弘修(国基研企画委員)
9月27日の自民党総裁選挙で、岸田文雄首相に代わる新総裁に石破茂元幹事長が選ばれた。10月1日召集の臨時国会で第102代首相に選出される。1回目の投票でトップだった高市早苗経済安全保障担当相は、上位2人の決選投票で、僅差で敗れた。左派、リベラル色の強い新聞やテレビによる前回3年前の総裁選をも上回る偏向報道にもかかわらず、高市氏が健闘したのは、中国の軍事的脅威や、性的少数者への行き過ぎた配慮など過激...
世界に広がる印僑ネットワーク 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
世界政治でインド系の活躍が目立ってきた。米国ではカマラ・ハリス副大統領が民主党大統領候補になり、史上初のインド系米大統領が誕生する可能性も出てきた。共和党副大統領候補になったJ・D・バンス上院議員の妻ウーシャ・バンスさん、共和党予備選に出馬したニッキー・ヘイリー元国連大使と実業家のビベック・ラマスワミ氏、ルイジアナ州元知事のボビー・ジンダル氏もインド系である。英国ではリシ・スナク前首相やサジド・ジ...
米中「相互確証破壊」時代の幕開けか―中国ICBM発射 中川真紀(国基研研究員)
中国国防省は9月25日、中国人民解放軍ロケット軍が同日、訓練用模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋公海へ向け発射して成功し、予定海域に正確に落下させたと発表した。中国によるICBMの公海への発射は44年ぶりである。 1980年5月、中国は初のICBMであるDF5を太平洋公海に向けて発射、約9100キロ先の目標海域に落下させた。これにより、中国は米本土へ届く核戦力を手に入れ...
景気回復を条件に金銭解雇を認めよ 本田悦朗(元内閣官房参与)
今回の自民党総裁選で小泉進次郎候補が提案した「解雇規制の緩和」は様々な方面で議論を呼んでいるが、誤解も多い。本稿ではまず、解雇規制の意味を明らかにする。次いで、公正な雇用関係と生産性向上を確保するためには、金銭による解雇を正面から認めるとともに、正規雇用のみを保護するのではなく、雇用条件を個別の契約ごとに具体的に定めることによって正規と非正規の区別をなくすことが有効であると提案する。 整理解...
「非軍」でクアッドの海保相互運用に対応できるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
21日に米デラウエア州で日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会議が開かれ、中国を念頭に海洋安全保障協力の強化で一致し、共同声明では海上保安機関が相互運用性を向上させることがうたわれた。 米豪印3カ国の海上保安機関(沿岸警備隊)が全て準軍事組織であるのに対し、日本の海上保安庁のみが海上保安庁法25条で非軍事組織と定められており、3カ国の沿岸警備隊と有効に相互運用性を向上させられるのか疑...
脅かされる韓国の言論の自由 西岡力(麗澤大学特任教授)
拙著『でっち上げの徴用工問題』の韓国語訳出版によって2021年に本研究所の日本研究特別賞を受賞した韓国のメディアウォッチ代表の黃意元氏が、言論活動を理由に検察に起訴され、一審で実刑判決が出て身柄を拘束され、今、二審で闘っている。 記事を理由に記者を逮捕 メディアウォッチはネット上でニュースを発信するメディアであると同時に、単行本を出版する出版社でもある。そのメディアウォッチは2016年...
南シナ海での中比衝突の背景 中川真紀(国基研研究員)
中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海で、両国の対立が激化している。8月19、25、31日には、フィリピンのパラワン島から約150キロ北西に位置するサビナ礁周辺海域において、中国海警船とフィリピンの沿岸警備隊巡視船および漁業水産資源局公船の間で衝突が発生した。 また、南シナ海をパトロール中のフィリピンの空軍機や漁業水産資源局の航空機に対して、中国軍によるフレア(火炎)の発射も3回確認されてい...
ウクライナ軍の越境攻撃は戦争の行方を変えるか 岩田清文(元陸上幕僚長)
8月6日に、第2次世界大戦以降、初となるロシア領土への地上攻撃を仕掛けたウクライナ軍は、わずか10日間で東京23区の2倍近い約1150平方キロを占領した。ウクライナ領内の同じ広さの土地を今年1月から7か月間かかって占領したロシア軍の進軍速度と比較すれば、まさに電撃戦と言ってもいいだろう。しかし、その後はロシア軍の抵抗もあり、8月末現在の占領地域は約1300平方キロと、戦線は膠着している。ウクライナ...
敦賀2号機の再稼働拒否がもたらす負の遺産―今こそ必要な規制委改革 滝波宏文(参院議員)
福井県敦賀市にある日本原子力発電(日本原電)の敦賀原子力発電所2号機が、原子力規制委員会の1メンバー(石渡明委員)のレガシーづくりのために廃炉にされそうになっている。 規制委は8月28日、敦賀2号機について、原子炉建屋の真下の断層が将来動く可能性を否定できないとして、再稼働の前提となる審査に不合格としたことを示す審査書の案を取りまとめた。原発の再稼働を認めない判断は2012年の規制委発足以来...
裁判官主導の社会変革は司法権の逸脱だ 髙池勝彦(国基研副理事長・弁護士)
最近の最高裁判所や下級審の判決が話題になることが少なくない。同性婚、夫婦別姓、戸籍上の性の変更などをめぐり、現行の民法その他の法律の規定が憲法違反であるとか、違憲状態にあるなどの判決が出た。 それらの判決理由には、私が賛成できないものが多い。一部の世論に迎合してゐるのではないかと思はれるからである。同性婚を認めないのは憲法違反であるとした高裁判決の問題点は3月19日の「国基研ろんだん」で、同...
F16投入だけで戦況は一変しない 織田邦男(麗澤大学特別教授・元空将)
ウクライナに待望の米国製戦闘機F16の第1陣が到着し、8月4日、記者団に公開された。現在のところ、デンマークが19機、オランダが24機、ベルギーが30機、ノルウェーが6機と合計80機の供与が予定されている。だが、ウクライナが受け取るF16は、夏に6機、年末までに15機から24機程度とみられている。F16が入れば「奇跡を起こす」「ゲームチェンジャーになる」と劇的な戦況好転を期待する向きがあるが、筆者...
北で秘密資金持ち逃げ事件 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
6月、朝鮮人民軍の政治警察である保衛局(保衛司令部から改称)の幹部が北朝鮮の独裁者、金正恩委員長の秘密資金3000万ドル(約48億円)を持ち逃げする事件が発生し、大騒ぎが起きている。 軍の外貨管理者が3000万ドル 今年春頃、北朝鮮は自国で生産する兵器の質を向上させるため、コンピューター制御で動かすCNC旋盤などの精密機械を中国から密輸することを計画した。そのために1億ドルをひそかに北...
パクス・アメリカーナの終わり 冨山泰(国基研企画委員兼研究員)
米共和党大統領候補に指名されたトランプ前大統領(78)は、年齢が自身の半分のバンス上院議員(39)を副大統領候補に選んだ。仮に11月の大統領選挙で大方の予想通りトランプ氏が当選すれば、「トランプ氏のクローン」(バイデン大統領)と呼ばれるバンス氏は次回2028年の選挙で共和党大統領候補となる可能性が大きい。憲法の規定により、トランプ氏の3選出馬はないからだ。これは、共和党の外交路線の基調として、トラ...
防衛白書は現場の苦悩も伝えよ 織田邦男(麗澤大学特別教授・元空将)
政府は7月12日、令和6年版防衛白書を公表した。令和6年は自衛隊発足70周年であり、また令和6年版防衛白書は初版から50冊目という記念すべき白書である。皮肉にも、ちょうどその日、陸海空の全幕僚長を含む計218人の処罰が発表された。 処罰に至った不祥事は、特定秘密の違法運用、潜水手当の不正受給、基地食堂での不正飲食、パワーハラスメントである。手当の不正受給や不正飲食は論外としても、特定秘密の違...
NATOが見据える「戦争の常態化」 佐藤伸行(追手門学院大学教授)
「既に第3次世界大戦が始まっている」との言説は今や特段、珍しいものではなくなっている。軍事と非軍事の境目が希薄になった国家間の戦いは、日々、多様な領域で繰り広げられている。 このほどワシントンで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、加盟国に対するロシアのハイブリッド攻撃やロシアを支える中国の動向に例年以上に神経を尖らせ、それを厳しく非難した。首脳宣言がウクライナの加盟について「不...
インドの総選挙と連立政権 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
予想外の辛勝だったモディ首相 6月4日に開票が行われたインドの総選挙(下院選、定数543)は、事前予想に反して与党連合の辛勝に終わった。モディ首相率いるインド人民党(BJP)は2019年の303議席から240議席へと大きく減らした。与党連合(国民民主同盟=NDA)が過半数の293議席を確保して政権を維持したものの、国民会議派を中心とする野党連合(インド国家開発包括同盟=INDIA)が234議...
国は戦死者の発生に備えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
4月に来日したアキリーノ米インド太平洋軍司令官(海軍大将=当時)は、2027年までに中国軍は台湾に侵攻できる能力を完成させる計画だとの認識を示した。バーンズ米中央情報局(CIA)長官も昨年、「中国の習近平国家主席が人民解放軍に対し、2027年までに台湾侵攻準備を整えるよう指示を出した」との認識を示している。 台湾有事により日本で存立危機事態や武力攻撃事態が認定され、自衛隊に防衛出動が命じられ...
なぜ北は韓国にゴミを送るのか 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
韓国政府は、北朝鮮が風船でゴミを繰り返し送り付け、全地球測位システム(GPS)利用を妨害するなど有害行為をしていることに対して、「北朝鮮が耐え難い措置を取る」として6月9日午後、対北拡声器放送を6年ぶりに再開した。対する北朝鮮は同日夜にまたゴミ風船を飛ばすとともに、10日朝、「強力な対応を取る」と金与正副部長談話で脅した。 韓国内の左派は、北朝鮮が拡声器の銃撃など軍事挑発を仕掛ける可能性があ...
河野氏は閣僚を辞任せよ 有元隆志(月刊「正論」発行人)
河野太郎規制改革担当相は自らの肝煎りで設置した再生可能エネルギーの規制緩和を議論する内閣府のタスクフォース(TF)が廃止に追い込まれた責任を取って、閣僚を辞任すべきだ。 再エネTFの関係資料に中国の国営電力会社のロゴマークが入っていた問題で、内閣府は6月3日に公表した調査結果(報告)で、中国の影響力行使を否定する一方で、再エネTFは本来の権限を越えた運用が行われてきたと指摘した。これを受け、...
日米台比越豪の連携で中国に立ち向かえ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
英国際戦略研究所(IISS)主催のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で6月1日、オースチン米国防長官は、中国が南シナ海でフィリピンに対して行っているハラスメント(嫌がらせ)を危険と非難する演説をした。 海上で中国の嫌がらせを受けているのはフィリピンだけではない。ベトナムは南シナ海の沿岸海域で中国の非合法漁業活動や、2000年に合意したトンキン湾中間線をベトナム側に押し出す動きに苛立ってい...
現代戦を国際法の視点で議論することの意義 黒澤聖二(元統合幕僚監部首席法務官)
「作戦と法は軍事行動の両輪である」と、ハリー・ハリス元米太平洋軍司令官が法の意義を基調講演で強調した。これは、国際法を議論する国際会議(米海軍大学主催、第6回アレクサンダー・クッシング国際法会議)が5月14日から17日まで、米東部ロードアイランド州ニューポートにある米海軍大学(以後「海大」という)で行われた際の発言である。確かに昨今の軍事行動には法意識が欠如するものが散見され、国際社会は「法の遵守...
「専守」では防衛できないことが立証された 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
ロシアの侵略に対するウクライナの防衛戦で、これまで北大西洋条約機構(NATO)は欧米がウクライナに供与した武器でロシア領内の目標を攻撃することを認めてこなかったが、最近になってNATO要人がこれを認める発言を始めた。ウクライナの防衛戦で「専守防衛」が効かないことを立証した形になり、日本も国是としてきた専守防衛を見直す契機とすべきだ。 ウクライナのロシア領攻撃容認へ 5月26日、NATO...
台湾海峡は日本の生命線 岸信千世(衆院議員)
5月20日、台湾の総統に民進党の頼清徳氏が就任しました。台湾では2000年以降、2期8年ごとに政権政党が交代しましたが、初めて同じ党が3期連続で政権の舵取りを行います。蔡英文前総統の後に続く頼政権でも、政策の継続に期待が高まっています。 頼氏とは、2016年の訪日時と、2021年に亡くなった安倍晋三元総理の弔問に見えた際にお話しさせていただきました。 特に21年の時は現職の副総統であり...
ウクライナ侵略戦争は反米枢軸を強化する 湯浅博(国基研企画委員兼研究員)
中国とロシアの独裁政権は、米国主導の秩序解体を視野に「包括的戦略的連携パートナーシップ」の深化を掲げた。それは単に、中国がロシアのウクライナ侵略戦争を後押しするだけでなく、ウクライナ戦争が反米枢軸の強化を目指す戦争であることを意味している。 「共通の敵」へ連携 プーチン・ロシア大統領の訪中は、ウクライナ侵略後で3度目の対面による首脳会談となった。昨春のモスクワでの会談は、プーチン氏が戦...
北の核攻撃訓練への危機感が薄い 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
5月13日の「今週の直言」(核の威嚇に動じない抑止戦略の構築を)で、織田邦男元空将は、ロシアによる新たな核の威嚇に対して米国防総省、北大西洋条約機構(NATO)、ウクライナ国防省が一斉に非難の声を上げたことを紹介した。そして、わが国も周辺国から核の脅威を受けているのだから、抑止戦略を構築せよと論じた。その意見に全面的に賛成する。 しかし筆者には、強い疑問を感じていることがある。ロシアが戦術核...
ドローン侵入で露呈した国内体制の欠陥 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローンで空撮した動画が中国のサイトに投稿されたことが問題となっている。本件に関してはドローンの「いずも」上空への侵入を許した防衛省・自衛隊に非難の声が上がっているが、見落とされている重要な我が国国防上の欠陥がある。それは、侵入したドローンに妨害電波をかけようにも、さらには自衛隊が運用するドローンを管制しようにも、自衛隊への電波割り当てが限られていることだ。 電...
東京15区補選、テレビは何の役にも立たなかった 瀬尾友子(産経新聞出版編集長)
テレビ報道は何のためにあるのか。今回、民主主義の根幹である選挙を守るために、テレビというメディアは何の役にも立たなかった。 東京15区衆院補欠選挙の期間中、この選挙戦の異常さが毎日、大量に動画でX(旧ツイッター)に流れていた。政治団体「つばさの党」(黒川敦彦代表)の根本良輔候補の陣営によるマイクを使った大音量での不規則発言と至近距離からの罵倒、選挙事務所への執拗な突撃、他陣営が身の危険を感じ...
岸田総理の米国議会演説を斬る 山上信吾(前オーストラリア大使)
4月11日に岸田文雄総理大臣が米国連邦議会の上下両院合同会議で行った演説については、日本のメディアの評価は総じて高いようである。総理一行に同行した記者による記事の中には、米国議会演説では見慣れた光景である「スタンディング・オベーション」が何度も起きたことに感激し、そのことをもって好意的に報じている様な純朴な感想が引きも切らない。 しかし、事は米国議会という日本の首相にとっては願ってもない大舞...
首相演説に欠けた米国人拉致問題 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
米連邦議会の上下両院合同会議における岸田文雄首相の演説(4月11日)を聴いていて、明らかに不足を感じた部分があった。拉致問題である。 北朝鮮の拉致に関して岸田首相が発したのは次のひと言のみだった。 「北朝鮮による拉致問題は、引き続き重大な問題です」。簡単すぎるだろう。事情に疎い議員なら、何のことか意味を取り損ねたかもしれない。 米国の上下両院議員を前にしての演説という機会を得なが...
韓国政治のブレをどう見るか 荒木信子(朝鮮半島研究者)
韓国では4月10日投票の総選挙結果が判明し、2027年に予定される次の大統領選挙も視野に入ってきた。日本からすると、選挙ごとに左右に揺れる韓国の政治的ブレが気にかかるが、この現象をどのように見たらよいのだろうか。 一寸先は闇 韓国で政治的なブレはこれまでも激しいものがあった。韓国建国(1948年)以降に限っても、歴代大統領の末期あるいは退任後は平穏と言えなかった。 例えばよく知...
単純労働者の移民は経済効果に乏しい 本田悦朗(元内閣官房参与)
「我々は労働力が必要だったのだが、実際にやってきたのは生身の人間だった」。これはスイスの小説家マックス・フリッシュの言葉であるが、移民問題の本質を突いている。移民の受け入れは、モノやサービスを取引する国際貿易とは本質的に異なり、文化の接触を伴う複雑な課題である。 3月15日に出入国管理及び難民認定法の改正案が閣議決定され、今国会に提出された。それによると、従来、「技能実習」の名の下に外国人実...
トランスジェンダーの不都合な真実 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
アビゲイル・シュライアー著『トランスジェンダーになりたい少女たち』が産経新聞出版から出され、ベストセラーになっている。大変、意義深い。 米で成立しないLGBT法案 米議会上院は、民主党が提出したLGBT差別禁止法案(英語の名称は一般的装いをこらした「平等法」)を審議するに当たって、公聴会にシュライアーを公述人の1人として呼んでいる(共和党の推薦)。逆差別を生むとか、性観念の曖昧な児童を...
自衛隊にかみついた朝日の占領軍史観 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
陸上自衛隊の第32普通科連隊(埼玉県大宮駐屯地)が4月5日に硫黄島で日米合同の戦没者追悼式に参加したことをX(旧ツイッター)の公式アカウントで紹介した際、先の戦争を「大東亜戦争」と呼んだのを問題視する記事が7日の朝日新聞デジタル版に掲載された。 筆者は、以下の二つの理由で、大東亜戦争の呼称を問題視する朝日新聞こそ、占領軍に押し付けられた歴史観に立っていると糾弾したい。 政府の正式名称は...