5月8日、戦没者遺骨収集の促進を目的とした「戦没者のご遺骨等の収集の加速化を図る国会議員連盟」が初会合を開いた。長年遺骨収集に関わり、関連する記事に定評のある産経新聞の池田祥子編集委員が講師として登壇した。遺骨収集の問題点を理解している池田氏を初回の講師に選んだのは適切な判断だと思うが、遺骨収集を体験してきた者として、この超党派議連にはどうしても距離感を覚える。
なかった関係機関との調整
関係者によると、新議連は国の遺骨収集事業に協力する一般社団法人日本戦没者遺骨収集推進協会との調整なしに設置され、主管官庁の厚生労働省も、いままでやり取りをしていた自民党の遺骨収集特命委員会から派生したわけではない新議連には、接しづらいところがあるという。推進協会に関係する団体からは、新議連に好意的な声は聞こえてこない。今年2月13日の衆院予算委員会で日本維新の会の国会議員が「超党派で遺骨収集議連を立ち上げたい」と発言したことを後になって知ったと語る団体関係者もいた。議連の設立趣旨は理解できるが、設立経緯が分からないというのが率直な感想である。
議連以外の動きの方が活発で、4月に米国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)のケリー・マッキーグ長官と対談した福岡資麿厚労相は早速行動に出た。5月5日、新たに集団埋葬地が確認された南太平洋の島国パラオのペリリュー島を訪問し、パラオ政府の担当閣僚と会談。日本人戦没者の遺骨収集加速化へ向けた協力を要請し、同意を得た。厚労相の主導で、今年の早い時期に現地調査を実施し、来年には遺骨を収集する計画だ。
韓国左派との連携に懸念
超党派議連には一つ懸念がある。日本ではあまり報じられないが、韓国は先の大戦や朝鮮戦争を含めた戦没者の遺骨収集活動に力を入れており、DPAAとも協力している。日本が遺骨収集する対象地域の中には、かつて日本国籍を持っていた朝鮮半島出身者の遺骨も含まれている。韓国の左派が慰安婦や戦時労働者の問題と同様に、朝鮮半島出身者の遺骨の存在を日本の植民地統治と結び付けて批判し、その主張を超党派議連が支える可能性を捨てきれない。
私は戦没者の遺骨収集に純粋な慰霊の気持ちで向き合い、今を生きる日本人として収集に道義的責任を感じ、収集の現状に問題があるとの意識を持っている。政治問題化は望まない。そのためにも、厚労省をはじめ関係省庁はより深く遺骨収集の意義を考え、米国との連携を深め、平和のために犠牲になった兵士をそれぞれの故郷、それぞれの遺族へ返す努力をもっとしてほしい。超党派議連があらぬ方向へ行かぬよう、注視していきたい。(了)