公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.10.16 (月) 印刷する

日本もプロパガンダ対策法の成立を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 米上院は2016年12月、ポートマン-マーフィー(Portman-Murphy)・カウンタープロパガンダ法(プロパガンダ対策法)を可決した。この法律はオハイオ州共和党のポートマンとコネチカット州民主党のマーフィーの両上院議員が超党派で提出した。ロシアや中国、そしてイスラム国が流布する偽情報に対抗するため、海外関与センター(Global Engagement Center)を国務省内に設立。国防総省や対外援助の国際開発庁(USAID)、政府放送管理局、さらには各情報機関の調整と情報の一元化を図るインテリジェンス・コミュニティー等とも連携して、省庁横断の反米プロパガンダ対策を講じることが狙いだ。

 ●歴史のねつ造に躍起の習近平政権
 日本では、下記のような中国や韓国のプロパガンダが横行している。
 米国でプロパガンダ対策法が成立した同じタイミングで、中国国防部は、「航空自衛隊のF-15が中国軍機にデコイ・フレアー(おとりの小型火炎弾)を撃った」として、「こうした行動は中国機と乗組員の安全を危険に晒し、危険かつプロらしくない」と非難した。しかし、彼らが証拠として示した写真のF-15機は、当日飛行任務についておらず、中国軍機を妨害した事実もなかった。
 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報には、次のような記事が繰り返し掲載されている。
 「2006年3月4日に沖縄では住民投票が行われ、その結果75%の住民が独立を求め中国との自由交流の再開を要求、残りの25%が日本への帰属だが自治を求めた」
 しかしながら、沖縄ではこうした住民投票が行われた事実はなく、また大多数の沖縄住民は日本への帰属を望んでいる。
 2013年5月8日の人民日報は、「沖縄の主権は未だ決まっていない」との社説を掲載。2016年8月12日の環球時報は「沖縄を琉球と呼称すべき」との主張を掲載している。いずれも沖縄を中国に帰属させようとするプロパガンダの一環と思われる。
 他にも「30万人南京大虐殺」をはじめ、習近平政権は、731部隊記念館を現在の10倍の規模にしようとしている。こうした中国のプロパガンダに対しては歴史的事実を以って対抗する必要があろう。

 ●海外でも慰安婦像の林立謀る韓国
 韓国では、「日本軍は20万人を性奴隷にした」と書かかれた慰安婦像が次々と設置されており、いまや海外にも設置の動きが広がっている。1944年にビルマから発せられた連合国軍による韓国人慰安婦調査報告書は「慰安婦とは売春婦以外の何者でもない」と結論づけている。彼女たちの中には一般兵士の約50倍の給料を得ていたものもあり、気に入らない相手にはサービスを拒否できた。ピクニックや夕食会、スポーツイベント等にも参加していたほか、時々韓国に帰省もできたことなど、とても奴隷とは言いがたい生活を送っていたことが公文書として残っている。ビルマの慰安婦が売春婦で、他のエリアでは性奴隷だったとするのは非論理的である。
 最近、韓国で制作された映画「徴用工」も、事実と全くかけ離れた日本を貶めるためのプロパガンダとしか言いようがない。
 我が国もプロパガンダ対策法を早急に制定すべきだ。上記のような中韓によるプロパガンダが、いかに虚偽に満ちたものかを白日の下に晒す国家的な取り組みを行うべき時がきている。