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2018.09.03 (月) 印刷する

安倍3選でも難しい日露平和条約 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)

 ロシア軍は9月11日から5日間、極東一帯で兵力30万人を動員する過去最大規模の軍事演習を実施する。これには中国軍も3200人の部隊を派遣し、緊密な中露蜜月をアピールするようだ。演習と並行してウラジオストクで「東方経済フォーラム」が開かれ、安倍晋三首相が出席するが、憂鬱な外遊となりそうだ。

 ●中国を同盟国扱いするロシア
 中露は例年、日本海や東シナ海で海軍合同演習を実施するが、ロシア国内の演習に中国が部隊を派遣するのは異例だ。ロシア大統領府報道官は「ロシアに非友好的な今日の国際関係では、大規模演習が不可欠だ」と説明した。
 報道官はまた、中国の参加について、「同盟国との協力を意味する」と述べた。欧米から経済制裁を受け、孤立するロシアは、中国を事実上の同盟国とみなしつつある。
 中国は同盟国を持たない外交路線を採用しており、かつての中ソ同盟のような条約が中露間で締結されることは考えられない。
 しかし、貿易戦争で対米関係が悪化する中国にとって、米国に対抗する点ではロシアと一致しており、中露の連携は今後拡大するだろう。中露関係の緊密化は、日本の安全保障にとって伝統的に脅威となる。
 軍事演習と並行してウラジオストクで開かれる東方経済フォーラムには、安倍首相や習近平中国国家主席が出席するが、安倍首相にとって難しい外交となろう。習主席とプーチン大統領は期間中、合同演習を視察する見通しで、結束を誇示する見通しだ。

 ●首相は中露離間を図る外交も
 一方で、日露交渉はますます難航している。安倍首相が5月に訪露した際も、焦点の4島での共同経済活動で進展はなかった。
 今回の軍事演習には、択捉島に試験配備されたロシア軍戦闘機も参加する見通しで、ロシアは4島への実効支配強化を狙っている。日本が抗議すれば、ロシア側は反発し、領土交渉は一段と難航しよう。
 ロシア政府は経済難に伴い、公共料金値上げや年金支給年齢引き上げを発表し、国民の反対デモが頻発。プーチン大統領の支持率も低下している。政権運営が厳しくなる中で、領土割譲といった不人気な政策に踏み切るとは思えない。
 かといって、首相が訪露をキャンセルすれば、中露の一層の結束を促すことになる。この際、習主席とも会談し、中露離間を図る外交を試みたらどうか。
 安倍首相が自民党総裁選で3選を果たしたとしても、悲願とする任期中の日露平和条約締結が困難であることは覚悟すべきだろう。