公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.11.22 (木) 印刷する

国際司法裁判所の実態見据えよ 島田洋一(福井県立大学教授)

 朝鮮人の戦時労働問題で、日本企業に賠償を命じた韓国大法院の判決を受け、政府は韓国側を国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針だという。
 日本の勝訴は「100%確実」といった楽観論が政府内外から聞こえてくるが、猪突猛進は危ない。現に日本が合理的な主張をしたにも拘わらず敗訴した、わずか4年半前の事例がある。
 2014年3月31日、オーストラリアが日本を国際捕鯨取締条約違反で訴えた裁判で、ICJは、日本による南極海での調査捕鯨を「科学的でない」と結論づけ、現行制度での調査捕鯨の中止を命じる判決を言い渡した。
 日本政府は「合法的な科学調査」との主張を展開したが、ICJは、日本の調査捕鯨は条約が認める科学的研究のための捕鯨ではなく、実態として商業捕鯨だとするオーストラリアの主張に軍配を上げた。

 ●調査捕鯨OKでも敗訴
 この経験から何を学ぶべきか。日本経済新聞電子版の「まさかの敗訴…捕鯨協会会長の驚きといらだち」という記事が示唆に富む(2014年5月13日)。
 判決は、実質的には日本の敗訴だが、ICJの常として、一見妥協的体裁を取っている。すなわち日本の南極海での捕鯨はおおむね科学的調査と認められるが、「調査の計画および実施が調査目的を達成するために合理的なものと立証されていない」とし、具体的には、捕獲するクジラの頭数や調査期間など細かい点で問題があるとの判断から、現行の捕鯨許可証を取り消すよう命じたものであった。
 日本捕鯨協会の山村和夫会長は、「今回の判決では調査捕鯨自体は否定されませんでしたが、継続にはかなりのダメージがあります」と述べている。
 ICJは15人の裁判官で構成されるが、日本人裁判官(外務省OBの小和田恆氏)が含まれるため、公平性担保を理由にオーストラリア人が特任裁判官として1人加わり16人で審議された。その内10人が、反捕鯨国の出身だった。
 反捕鯨国ではない中国、ロシア出身の裁判官も加え、最終的に12人の裁判官がオーストラリア側を支持した。

 ●日本は主体的解決探れ
 国連安保理常任理事国は、常にICJに1人裁判官を送り込む慣例になっている。今後とも、中国人、ロシア人が必ず含まれると見ねばならない。
 「徴用工」をめぐる国際裁判で、彼らが日本の主張を全面的に支持するとは考えにくい。むしろ逆の立場を取るのではないか。韓国は特任裁判官に、歴史問題の論客を入れてくるだろう。
 ICJは、日本はヒトラー、ムソリーニと組んだ侵略国という歴史認識を持つリベラル・エリートが支配する世界である。そこに中国人、ロシア人、韓国人の裁判官が加わって、戦時朝鮮人労働者に関する日本の提訴が審議されることになる。常識的に考えて、「日本の勝訴は確実」と言える世界ではない。
 ICJに判断を委ねるのではなく、日本が主体的に、韓国に対する制裁を考えていくべきである。