公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.01.30 (水) 印刷する

韓国は一刻も早く「現実」に立ち返れ 黒澤聖二(国基研事務局長)

 先月20日午後3時頃、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦が、能登半島沖のわが国の排他的経済水域(EEZ)内を監視飛行中の海上自衛隊のP-1哨戒機に対し、射撃管制レーダーを照射し威嚇した。
 この問題に続き、今月24日、韓国国防省は東シナ海で監視活動中のP-3C哨戒機を撮影した画像を示し、「威嚇飛行」だと宣伝した。これには筆者も、かつて海自の対潜哨戒機に搭乗していた経験から、まさに「開いた口が塞がらない」状態となった。いちいち理由を説明するまでもないほどだが、韓国側の説明はあまりに「稚拙」「矛盾」「すり替え」に満ちていると指摘せざるを得ない。

 ●稚拙で矛盾だらけの言い訳
 まず、射撃管制レーダーの件だが、平時であれば「御法度」という不文律があり、西太平洋海軍間は「海上衝突回避規範(CUES)」という明文ルールでも禁止されている。筆者も、現役時代そんな威嚇は受けたことがない。
 韓国側は当初、レーダー照射は遭難船舶の捜索のためと言い訳していたが、その後、照射自体をなかったものと強弁を始めた。海自から証拠となるレーダー周波数を突き合わせて事実究明しようと提案すると、一方的に拒否し、「無礼だ」などと日本側に責任転嫁をする。いきなり通行人に殴りかかろうとして、お前が悪いからだと開き直るような稚拙な対応というほかない。
 そもそも友軍機の飛来は歓迎こそすれ、追い払う道理はない。通信設定をして挨拶を交わし、エールを送りあうこともある。筆者が現役だったころは普通に交話をしたが、追い払われるようなことはなかった。特に、人命救助という人道に基づく活動であれば、レーダー覆域の広い航空機に周辺捜索の協力を依頼するのが合理的な対応である。しかし、そのような配慮があったとは聞こえてこない。
 さらに公表された映像を見る限り、当時の海面状況は凪の状態で、シークラッター(海面反射波による雑音)もなく、通信状況は良好だったと推察される。しかるに、韓国艦艇は哨戒機からの呼びかけが聞き取れなかったという。陸上司令部を経由して確認するなど他の手段も試みられたふしはない。そして、いきなり最終手段(射撃)一歩手前の射撃管制レーダーの照射である。まったく筋が通らない説明は、「矛盾」のオンパレードだ。

 ●韓国の心ある人は声上げよ
 韓国側は、レーダー照射を受けたわが国哨戒機に「低空での危険飛行」と非難、続いて、東シナ海で撮影したP-3C哨戒機について「威嚇飛行」と非難し、レーダー照射から話を「すり替え」ている。しかし、「低空で脅威」というのも難癖でしかない。防衛省はP-1哨戒機の飛行経路を公表したが、ごく一般的な監視パターンでしかなく、特異な動きは見られない。
 筆者も同種の任務中、民間船であっても監視対象から「脅威を感じた」などというクレームを受けたことはない。ましてや、相手は攻撃兵器を満載した艦艇であり、哨戒機は丸腰なのだ。同型機を運用する韓国海軍なら先刻周知のはずだ。どこに脅威があるというのか。
 韓国側が公表した各種資料については、すでにネット上も酷評されているので、ここでは控える。しかし、あえて言うなら、これ以上嘘に嘘を重ねると、取り返しがつかなくなると忠告したい。筆者には韓国海軍にも友人が複数いる。いずれも人間的にも能力的にも素晴らしい人たちだ。今回のことで本当に心を痛めているのは、韓国の心ある人たちなのではないか。そう思うと複雑な心境だ。
 韓国には一刻も早く現実世界に戻ってきて欲しい。