公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.01.24 (木) 印刷する

日本も対諜報対策の強化を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 22日に米国の国家インテリジェンス戦略が公表された。本文書は、4年に1回、米インテリジェンス・コミュニティーの代表である国家情報長官が作成するものである。なお米インテリジェンス・コミュニティーとは、陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊の情報部以外に、国務省、財務省、エネルギー庁、国土安全保障庁の各情報部門、そして連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)、国家安全保障庁(NSA)、国家偵察局(NRO)、国防情報局(DIA)、国家地球空間情報局(NGA)、さらに法務省の麻薬取締局も加わった16の組織で構成される。

 ●宇宙・サイバー空間でも脅威
 今回の戦略文書で、私が強調されていると感じたことは、宇宙・サイバー空間と国内に蔓延る外国の諜報活動の脅威である。とりわけ宇宙では中国とロシアが継続して遂行している対衛星兵器に対する懸念が示されている。
 日本でも、年末の中期防衛力整備計画では山口県に宇宙を監視する施設と部隊を設け、サイバー空間に関しても監視体制が強化されることになっている。しかるに国内に蔓延る外国の諜報活動対策は、防衛省だけでなく国家全体で対策を講じなければならない。日本にはスパイ防止法がなく、国内のスパイを取り締まる根拠法規すらない。摘発には外為法のような法律を適用しているのが実情である。
 米国の国家インテリジェンス戦略文書は、14頁に外国諜報活動の脅威に関しては、日本を含む重要なパートナーとの情報交換を強化する重要性が謳われている。ところが日本の現状はこの期待に十分沿うことができない。

 ●重要性増す同盟国間の連携
 文書の後段で7つ掲載されている活動目標の6番目に、パートナーシップとして同盟国や外国情報・保全組織等との協力が謳われている。スパイ防止法すら制定されていない国が、米中新冷戦時代にあって米国の同盟国として機能するであろうか。
 日本と同様の事情にあったオーストラリアでは、昨年6月にスパイ防止法が制定されている。米中新冷戦を機に日本としても国内の情報保全措置を強化すべきだ。
 とりわけ、昨今国会で成立した外国人労働者拡大法案を施行するに当たって対諜報措置をしっかり取ることが肝要だ。特に知的財産権を守るため、国内の企業や大学におけるスパイ活動を防ぐ保全対策が強く望まれる。