公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.04.08 (月) 印刷する

「竹島」の解決なくして日韓関係の進展なし 山田吉彦(東海大学教授)

 竹島(島根県)問題の解決なくして韓国と日本の友好関係はありえない。自国の領土を侵している国を黙認するのであれば、その土地を放棄したという事になる。言葉や書面だけの抗議など、意味を持たないことは歴史が証明している。
 今、日韓外交関係は冷え込んでいる。海洋安全保障における両国関係は、さらに厳しい状態にある。一触即発の事態といっても過言ではない。昨年末に発生した韓国軍艦による日本の哨戒機へのレーダー照射問題に端を発し、韓国軍への信頼は地に落ちた。真実を捻じ曲げられては、防衛分野における協力は難しく、もはや友好国とは言えないだろう。
 そもそも、わが国固有の領土である竹島を不法占拠し続けている韓国を友好国であると考えること自体に問題がある。歴代の政府が竹島問題の解決を先送りしてきたツケが回ったのだ。

 ●まるで日本を敵国扱い
 先月、韓国は竹島と鬱陵島周辺海域で水上ドローンも使った海洋調査を行う計画を発表した。しかし、この計画には実現性が感じられない。広大な海域で調査を行うにもかかわらず2億円の予算しか計上していない。しかも水上ドローンは安定性に欠けるため、本格的な海洋調査には不適当である。
 今回の調査の発表は、竹島問題への積極的な対応を通し、反日を煽る文在寅政権の支持層へのアピールが狙いであろう。さらに別の目的も考えられる。それは、他国が竹島への上陸作戦を行った場合の対応策の策定のために竹島に限定した沿岸の海底地形の確認を行う可能性だ。基礎調査のみ民間で行い、そのデータをもとに軍部が詳細な調査をおこなうことになる。 これは、昨年創設された陸上自衛隊の水陸機動団の行動を想定したものだろう。北朝鮮との調和を最重視する韓国にとって、北朝鮮に対し拉致被害への対応を求め、また、経済制裁の厳格な履行を求める我が国は、敵国となっている可能性が強いのだ。
 日韓の海洋安全保障の舞台は、日本海である。現在の日本海の情勢は、危険な状態にあり注意を要する。昨年、日本沿岸に漂流、漂着した北朝鮮の漁船と思われる船は200を越える。単なる漂流船と考えるには、数が多すぎる。北朝鮮からの密航者が、日本に進入している可能性が高い。また、日本海の北朝鮮海域には、1000隻を超える中国漁船が出漁しており、中国海軍、中国海警局が進出する布石が敷かれているのである。

 ●国際機関提訴も躊躇うな
 2回目の米朝首脳会談が決裂したため、日本海情勢はさらに混迷を深めている。韓国が北朝鮮と融和策を取り続けるのであれば、不法国家と国際社会との境界線は、38度線ではなく、対馬海峡に引かれることになる。国境離島の防衛策も含め、洗練した海洋安全保障施策が必要になる。米国は沿岸警備隊の艦艇を韓国沖に派遣し、北朝鮮との瀬取りを行う韓国の船舶に対し取り締まりを強化するとともに、それを容認してきた韓国政府に圧力をかけている。韓国に対し不信感を持っているのは、日本だけではない。それらの国々と協力して、韓国に様々な領域の国際法を守るように圧力をかけるべき時期にきているのだ。
 朝鮮人戦時労働者の問題も含め、韓国政府が国際法および日韓基本条約等の取り決めを順守できないのであれば、国を挙げて国際機関へ提訴することも考えなければならない。まずは、竹島問題の解決なくして日韓関係の進展はない。反日の動きを続ける文政権の今だからこそ、厳正にかつ冷静に、国際法に基づいた日韓関係の再構築に動き出すべきである。
 ただ、不思議なことに韓国の若い世代の日本へのあこがれは増しているようだ。日本への旅行者は後を絶たない。日本留学を希望する若者も増えている。
 日本が明確に国家としての意思を示し、それを実践することが、曖昧な関係から悪化を続ける日韓関係に終止符を打ち、認め合える2国間関係を構築することができるのである。