公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.08.26 (月) 印刷する

安倍政権、歴代最長の意義 屋山太郎(政治評論家)

 安倍晋三首相は8月24日、首相の通算在任日数が戦後最長となり、11月20日を過ぎると、桂太郎首相の2886日を抜いて歴代最長の首相となる。
 この間、内政・国際問題が山積したが、いずれも上手に乗り切ってきた。安倍氏が第1次内閣の1年間で処理した問題は①教育基本法の改正②憲法改正に必要な国民投票法の制定③防衛庁の省昇格―の3つある。それまで1内閣、1課題といわれた政治スピードから見ると1年間に3課題は凄かった。その後の安倍政治は3本柱の仕上げ作業だった。
 病気が治った後で聞いたことがある。「なぜあんなに走ったのか」と。安倍氏は「少なくとも3課題だけは片付けたかったから、懸命に走った。しかし、あとで拙速だった反省もあり、第2次以降はゆっくりやろうと思った」という。

 ●脱官僚からアベノミクスへ
 第2次安倍内閣はアベノミクスを持ち込んだが、休養中を含めて経済の勉強を深めた。この勉強を通じて安倍氏が悟ったのは財務官僚に財政・経済は任せられないということだったそうだ。
 安倍氏は「課長から局長まで東大法学部で揃えているから、皆が皆、言うことが同じ。違った発想ができないのだ」とみていた。各省幹部600人の人事を官房に設けた内閣人事局が査定する仕組みができた。これがなければ〝脱官僚〟などはできなかったろう。
 内閣法制局も一律に「集団的自衛権は権利としてはあるが、行使はできない」の一点張り。国際畑では違う解釈ができるという意見があり、法制局長官のクビを外務官僚に挿げ替えた。「権利はあるが行使はできない」ものを権利と呼べるのか。日本語を勉強すべきだ。

 ●日米基軸そして憲法改正
 安倍氏は昨年10月、日本の首相として7年ぶりに訪中した。自民党内は安倍氏を慮って、「中国問題」を持ち出す者が少なかった。二階俊博幹事長は一声かければ何千人の業者を中国につれていける。古い日本人なのか、中国と聞けば自然に頭が下がるのだろう。谷垣禎一氏に連なる、宮澤喜一氏、河野洋平氏、加藤紘一氏らが〝河野談話〟まで作り上げたのは、米国とはそこそこに、中国・韓国と組むべしと常々唱えていたからだ。良好な関係を作ることと媚を売ることとは違う。
 現在は安倍氏に存在感があり、人事権を握っているから、親中派は息をひそめている。安倍後継を選出する時に、最重要課題は親中・韓派を総理にしないことである。日・米・中の正三角形論は今でこそ、部屋の隅で語られているが、時々、声が漏れてくる。安倍氏が2次にわたって固めた外交路線を崩そうという手合いは追い出せ。政党は安倍風に党路線を固めていくものだ。米国も日本も海洋国家として同盟を結ぶ以外の選択肢はない。その際不可欠なのは日本の憲法改正だ。