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2019.09.19 (木) 印刷する

オブライエン新安保補佐官への期待と懸念 島田洋一(福井県立大学教授)

 トランプ米大統領が9月18日、辞任したボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の後任に、ロバート・オブライエン人質問題担当大統領特使を任命した。日米関係のさらなる緊密化に貢献して欲しいところだが、期待と共にいくつか懸念もある。

 ●候補5人で最も安全な存在
 オブライエン氏はポンペオ国務長官の下で、2018年5月以来、トルコ、リビア、イエメンなどで拘束された米国人の解放交渉に当たってきた人物である。
 民間で弁護士として働きつつ、共和、民主両政権下で、アフガニスタンの司法制度整備(2007年から2011年)や国連安保理の運営、国連総会での米国代理代表などを散発的に引き受けてきた。
 米紙ワシントン・ポストによれば、トランプ氏が17日に言及した最終候補5人(筆者の友人でボルトン氏の首席補佐官などを務めたフレッド・フライツ氏も入っていた)の中で「最も安全な存在」で、来年に大統領選挙を控え、ボルトン氏のような荒波を起こす心配がない点が評価されたという。ポンペオ氏との関係もきわめて良好とされる。

 ●「拉致」解決では突破口にも
 懸念材料としてはまず、ボルトン氏と違い、大量破壊兵器拡散防止分野での専門知識および経験を欠くことである。
 また大統領や国務長官との関係が円滑ということは、言い換えれば、イエスマンになりかねないということだ。これは欺瞞と陥穽に満ちた北朝鮮との核交渉において不安材料ともなる。
 一方、人質問題担当大統領特使としての経験は、拉致問題の解決に生きるかも知れない。オブライエン氏は、北朝鮮に拉致された可能性が高いデービッド・スネドンさんと同じモルモン教徒である。解放交渉に一段と力を入れて欲しいところだ。それが日本人拉致被害者の解決にも突破口になるかもしれない。
 日本政府はオブライエン新安保補佐官に対し、北の核問題で妥協しないよう適宜しっかりと釘を刺すと共に、拉致問題で具体的かつ踏み込んだ連携を図っていくべきだろう。