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2020.02.05 (水) 印刷する

地球温暖化は殆ど止まっている 赤祖父俊一(アラスカ大学国際北極圏研究センター初代所長)、田中博(筑波大学計算科学研究センター教授)

 地球温暖化防止運動が暴走している。実は炭酸ガスの放出量は依然として急増しているが、地球温暖化は2000年頃から殆ど止まっている。コンピューターの計算によれば2000年から20年の間に0.1~1.5度上昇することになっている(2100年までは0.5~7.5度の上昇)。こんな矛盾と不確定さに満ちた予測をもとに地球温暖化は、依然として世界の大問題とされているのである。

 ●気象学者に「気候」は分らない
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は気候変動の国際学会ではない。ここに招集された2000人以上の研究者は、大部分が「気象学者」であった。しかし、過去の気候の研究から気候変動を推定するのは「気候学者」である。彼らは全世界から集めても100人程度であるが、IPCCにはあまり参加していないようだ。
 気象学者の研究は未来の気温を計算で推定することが主であり、自然変動には殆ど無知、無関心である。2000人以上の「専門家」が、現在起きている地球温暖化は「very likely」に炭酸ガスによるものであるとして一致(consensus)を見たのは、自然変動について無知であったためである。実はこの誤りが学問的に現在の暴走の原因の一つとなっている。
 地球の「大危機」を唱えたIPCCはメディアの注目を集め、地球温暖化はニュースの好材料となった。温暖化の証拠が欲しいメディアは、氷河の末端で氷が崩れる動画を撮りたいと言う。「氷河は氷の河で、氷が流れ氷河の末端で崩れ落ちるのはあたりまえ」と諭しても、彼らは聞く耳を持たない。そして「一致」を盾に「温暖化の記事はもうできている。写真だけもらえればよい」と言ってのけるのだ。

 ●ばらつき多い将来予測
 IPCC設立当時、スーパーコンピューターは容易に使えるようになっていた。そのためIPCCの気象学者の間では、彼らの気象の基礎知識を使って炭酸ガスの増加による将来予測、即ち2100年までの気温上昇を予測する研究が爆発的に流行した。
 しかし、結果にはひどいばらつきがある。そして一般の人々はそれを一致と理解している。このような不完全な計算結果を「世界の重大問題」として取り上げてよいのであろうか。
 その計算結果の不正確な証拠として、IPCC が全く予想しなかったことが起きた。2000年頃から温暖化が殆ど止まってしまったのである。
 実は地球温暖化が炭酸ガスによるとする主張に疑問を持ちはじめた学者もいた。アメリカの科学誌「サイエンス」も2009年10月2日号で、一部の研究者は気温上昇が止まっていることに注目していると紹介している。
 しかし、これについても研究者たちはhiatus(一時停止)という言葉で表現し、これまでの IPCCの研究が間違っていたといわない。さらに「地球温暖化」が「気候変動」と呼ばれるようになってからは、それによる災害までが、炭酸ガスによることになってしまった。
 環境破壊や汚染を温暖化にこじつける場合も多い。これもメディアにとっては「温暖化」の問題を指摘する好材料になった。
 筆者等にとって、炭酸ガスの放出量を減らすことに異論はない。研究者として、この問題は正しく炭酸ガスの影響を理解し、自然変動も十分に研究し、冷静に対処すべきであると思う。北極圏のことさえまだ分からないことばかりである。