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2020.04.06 (月) 印刷する

国会は直ちに休会すべきだ 有元隆志(産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人)

 武漢コロナウイルス問題で日本は国家的危機に直面している。にもかかわらず、立憲民主党などの野党はいまだに学校法人「森友学園」問題を持ち出し、安倍晋三首相を追及している。与野党は感染が拡大しても国会を休会にしない方針だが、令和2年度補正予算案など重要法案の処理を除き、直ちに休会にすべきだ。

 ●森友とコロナ、どちらが緊急か
 元参院議員で慶応義塾大学教授の松井孝治氏は月刊「正論」5月号で、「不毛な与野党対立の中で、修正協議や建設的提言が殆どと言ってよいほど行われないのも日本の国会の特徴である」と書いた。象徴的な場面が1日の参院決算委員会であった。
 「安保闘争のとき、樺美智子さんがお亡くなりになった。その後に岸信介総理が辞職された。一人の命の大切さ、重みというものをお感じになったんじゃないのかなと思います」
 立憲民主党の野田国義氏は安保闘争を引き合いに、「森友学園」への国有地売却をめぐり、決裁文書改ざんを強要されたとのメモを残して自殺した近畿財務局の男性職員の手記を取り上げ、調査を求めた。
 安倍首相は「改めてご冥福をお祈りしたい」としたうえで、「ちょっと事実の誤認をしておられるので訂正をさせていただきたい」と述べ、岸首相が総辞職を決意したのは、安保闘争によりアイゼンハワー米大統領の訪日を実現できなかったことへの責任をとったと説明した。
 そもそも安保闘争と森友問題を同列に論じるのは論外であり、森友問題は「不要」とは言わないが「不急」だろう。最優先すべきはコロナウイルス対策であることは言うまでもない。首相は対応に追われていたにもかかわらず、この日4時間も席に縛り付けられたままだった。

 ●国会対応で疲弊する官僚たち
 国会での審議だけでない。松井氏は次のような問題点も提起する。
 「最近では、与党事前審査に加えて、野党からも、各省庁の政策実働部隊が永田町との調整事務に執拗に呼び出される傾向が顕著だ」
 本来、コロナウイルス対策に専念すべき厚生労働省をはじめ各省庁の幹部が、与党議員や野党合同ヒアリングの出席のため時間をとられている。テレビ出演する議員から呼び出される官僚も少なくない。その結果、彼らの仕事は深夜まで及び、疲弊している。松井氏は通産省出身で、民主党で与党も野党も経験した。官僚、議員双方の実情をよく知る人物だ。
 「対永田町調整事務の飛躍的増大が、霞が関の実体経済社会に関する調査分析能力、政策提言能力の劣化や若手官僚の転職・退職ラッシュの直接的な原因となっていることは火を見るよりも明らかである」
 この松井氏の指摘に反論できる政治家はいるだろうか。政府にコロナウイルス対策に専念させるため、与野党を問わず議員たちは配慮すべきであり、当面休会が望ましい。それでも審議したいという議員のために、松井氏は、首相と野党党首、そして各大臣と野党カウンターパートが週に一度、1、2時間徹底討論するような「政治家同士の討論型議会」にすることを提案している。コロナウイルスに打ち克つためには与党も野党もない。