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2020.12.07 (月) 印刷する

朝日は日本を代表する〝保守新聞〟に 石川弘修(国家基本問題研究所理事・企画委員)

 日刊紙の部数減が加速しているが、中でも朝日新聞の減少幅が大きく、今年8月の販売部数はついに500万部台を割り、499万部を記録した(月刊誌FACTAオンライン号外)。2009年まで維持していた800万部台から実に300万部を越す大幅減となったのは、単にネットメディアに押され、紙媒体が退潮したということだけでなく、立憲民主党などと共通した左寄りの、硬直化した偏向報道が読者離れを引き起こしたものとみられる。

実売部数は400万台割る

対抗する読売新聞も一時は1000万部を誇ったが、すでに200万部以上の部数減に直面、800万部台を割った。公式部数はABC協会の発表をベースにしているが、この数字から販売店に眠る「押し紙」や「残紙」を差し引くと、朝日の場合、実売部数は400万部を割り、300万部台に入ったと業界通は指摘する。朝日同様、左寄りの毎日新聞は207万部で、ブロック紙の中日新聞に追い抜かれ、第5位に転落した(今年9月のABC発表。ちなみに日経新聞が223万部で第3位、産経新聞は135万部)。

過去10年で朝日新聞に最も大きな打撃を与えたのは、2014年の「慰安婦誤報」や東京電力福島第一原発事故に関する「吉田調書」の誤報問題で、半年間に約50万部の購読停止があったことはよく知られている。問題は、責任をとって社長を辞任した木村伊量氏に取って代わった渡辺雅隆現社長になってからも、報道姿勢に変化がないことだ。

尖閣より桜夕食会費問題

11月25日の朝日朝刊を開いてびっくりというか、相変わらずとの思いを強くした。

一面トップから二、三面の見開きページまで、「安倍前首相の桜を見る会、夕食会費補填問題」の関連記事で埋め尽くされていた。おまけに中面には「前首相の矛盾を見逃せぬ」と題した社説までついている。

この日、国家基本問題研究所は訪日中の王毅中国外相に合わせて「尖閣が危ない」とのタイトルで意見広告を産経新聞に掲載、日本政府に尖閣を守る具体的な行動を求めた。
読売、産経は一面トップこそ「GO TOトラベル」関係だったが、日中外相会談は、トップ脇の3段の扱い。産経は二面の主張(社説)欄でも「首相、王毅氏に抗議せよ」と訴えた。これに対して朝日は、三面に3段で「日中往来ビジネス再開へ」の見出しで日中外相会談を報じただけだった。

前首相の桜・夕食会費補填問題については、産経、読売ともに一面で3段から4段の扱いだったが、他の面では扱っていない。朝日の編集姿勢には疑問を感じざるをえない。

朝日の報道ぶりは、日本にとって根本的に重要な憲法改正や防衛力の強化といった問題をわきに追いやり、「森友、加計」「桜・夕食会」や「日本学術会議」といった問題に極端な執着を示しているとしか思えない。国会における立憲民主党など野党の政治姿勢に通じるものがある。

評価は「変えようとしない」

2017年から3年間にわたり、国民の政治意識や政党観を調べている読売・早稲田大共同世論調査によると、20歳代から30歳代の若年世代は「変えようとしない勢力を保守とみている」という。一番保守的なのが公明党、次いで共産党、民進党(立憲、国民の前身)であり、逆に最もリベラルなのが日本維新の会、次いで自民党という位置づけだ。伝統的なイデオロギー対立で政党をみる50歳代以上の見方と逆転している(30代に限って言えば、自民党より民進党の方がリベラル)。具体的に「改革志向」の強弱でみると、改革志向が弱いのが共産、公明、民進の各党だ。

憲法改正や防衛問題、政権批判などで野党と〝共闘〟する朝日に対しては、いずれ「日本を代表する〝保守的新聞〟」との認識が一般に広がる可能性がある。これを皮肉と言わずして何と言おうか。