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2020.12.14 (月) 印刷する

国会は自衛隊の憲法明記を最優先せよ 有元隆志(産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人)

 自衛隊を憲法に明記する。これが中国の攻勢で厳しさを増す国防の最優先課題であり、中国・武漢発の新型コロナウイルス対策の最前線でも昼夜問わず働いている自衛隊員に対する国会議員の最低限の責務ではないか。自衛隊の地位も明確にしないまま、国の守りの最前線に立たせ続けることは許されない。

コロナ対策より桜追及の野党

今年前半の通常国会で野党は、新型コロナウイルス対策よりも、首相主催の「桜を見る会」や森友学園問題を優先するかのような発言をしていた。その先鋒が立憲民主党の福山哲郎幹事長で、3月4日の参院予算委員会では「総理(当時は安倍晋三首相)、嫌でしょうが桜を見る会について質問します。時間が余れば、コロナ対策もやります」と述べた。福山氏は実際にはコロナ対策に関する質問をしたのだが、コロナ対策は時間が余ればするようなことではない。

憲法学者の百地章・国士舘大学特任教授が国家基本問題研究所の「今週の直言」で、「コロナウイルスの蔓延という国難の中、第2波、第3波のウイルス襲来に備えて、憲法審査会は緊急事態法制の整備や憲法改正に向けた論議を速やかに開始すべきだ」と訴えたのは6月15日のことだった。病床の増床、医師・看護師の確保はもちろんのこと、緊急時の対応を記した「緊急事態条項」を憲法に盛り込むことなど憲法改正は喫緊の課題であった。

今年前半の新型コロナウイルスの感染拡大の最中、多くの自衛隊員が災害派遣命令で支援活動に従事した。いま再び、各地で活動している。にもかかわらず、国会は一体何をしてきたのか。

憲法改正に関する閉会中審査も行わず、秋の臨時国会においても、緊急事態条項を憲法に盛り込む動きは一向に進展しなかった。それどころか与党には、憲法改正ばかりか、弾道ミサイル防衛でも敵基地攻撃能力の保有に関する議論にも真剣に取り組んだ節が見られない。一方で野党で「自衛隊の段階的解消」を掲げる共産党は野党連合政権づくりを進めようとしている。

「ヤルヤル改憲」いい加減にせよ

12月2日、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の主催で開催された集会において、作家でジャーナリストの門田隆将氏が登壇した。

「国家の使命は何ですか。国民の生命と財産、領土を守ることです。その使命を誰が果たしているんですか。「ヤルヤル詐欺」はもういい加減にしてほしい。国民の命を、子孫の命をそのまま(危機にさらしたまま)にする。そういう政治家に対して、あなたたちは何をしているのかと言いたい」

自衛隊制服組のトップだった河野克俊前統合幕僚長は現役当時の2017年5月、講演で「一自衛官として申し上げるなら、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになれば、非常にありがたいと思う」と述べた。

河野氏は退任後、産経新聞の『話の肖像画』で、この発言について「憲法改正の核心は9条にあり、その中心となるのは自衛隊の位置づけです。この問題では自衛隊は当事者であるわけです。国会が改正を発議し、国民の過半数が認めたという仮定に対しての私の気持ちを述べました」と振り返っている。

いまでも多くの自衛隊員は河野氏と同じ気持ちであろう。自衛隊に少しでも感謝する気持ちがあるなら、国会議員は憲法改正に尽力すべきだ。