公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.06.07 (月) 印刷する

竹島を地図上から消した五輪組織委 冨山泰(国基研企画委員兼研究員)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の公式ホームページの地図に竹島が日本領土のように表示されているとして、韓国が日本政府に削除を要求している問題で、聖火リレーの経路を示したこの地図に目を凝らしたが、竹島は肉眼で見えない。韓国の主張は明らかに言いがかりだ。

しかし、真の問題は別のところにある。2年前に韓国から抗議された際、竹島は地図上にはっきり表示されていたようだから、その後に組織委が地図を差し替えた際、韓国に迎合して竹島を見えなくした疑いがある。

「姑息」な修正が抗議招く

5月21日、反日で知られる韓国・誠信女子大学の徐敬徳教授が交流サイト(SNS)に投稿し、①以前、東京五輪の公式サイトの地図に独島(竹島のこと)が小さな点で描かれ、日本の領土であるかのように表記されていて問題になった②韓国側が抗議した結果、地図のデザインが変わり、肉眼で見ると独島が消えたかのような措置が取られたが、地図を拡大すると、やはり日本の領土として表記されているという姑息な手段が使われた―と書き込んだ。

過去の報道を調べると、確かに2019年7月に韓国政府が組織委の当時の地図に抗議したが、日本政府に「竹島は日本固有の領土」と一蹴されていた。同年8月には組織委副事務総長が、地図を変える予定はない、と明言していた。

しかし、実際には、今年5月までに地図は差し替えられ、竹島は拡大してようやく影らしきものがぼんやり浮かぶだけになっている。

徐教授の投稿を受けて、韓国ではインターネット上で日本への不満が爆発し、丁世均前首相や李洛淵元首相が東京五輪のボイコットに言及するまでになった。韓国外務省は6月1日、日本の駐韓公使を呼び出して地図に抗議した。日本側は「竹島は日本固有の領土であり、抗議は受け入れられない」と再び突っぱねた。

事なかれ主義で韓国に迎合

地図を拡大し、肉眼では見えない竹島の痕跡が見つかったと声高に主張する韓国のしつこさには閉口する。北朝鮮の国営朝鮮中央通信は6月4日、「日本の行為は五輪を領土強奪の野望の実現に悪用しようとするもので、容認できない」と報じ、この問題で韓国の文在寅政権と北朝鮮の共闘が実現した。しかし、日本にとって本当の問題は、徐教授が「韓国側の抗議で地図のデザインが変わり、肉眼で見ると独島が消えた」と述べている部分にある。

英誌エコノミスト最新号(6月5日付)は、東京五輪組織委が韓国の最近の抗議を受けて地図を修正したかのように書いたが、徐教授の説明が正しければ、今回の抗議後に修正したのではなく、抗議前から地図は修正されていた。時期はともかくとして、地図を修正した事実は動かない。組織委は2年前からの韓国の抗議に結局のところ事なかれ主義で対応し、地図をこっそり修正して竹島を見えにくくした。その結果、日本は国家の根幹に関わる領土問題でさえ、強く押されれば譲るという印象を世界にばらまいてしまったのである。

東京五輪組織委の地図。左が修正前(四角で囲んだのが竹島)、右が修正後(竹島は見えない)=出所:wowkorea