公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.06.29 (火) 印刷する

違和感覚える福島氏への仏勲章授与 石川弘修(国基研理事・企画委員)

 フランス政府は6月23日、社会民主党の福島瑞穂党首(参議院議員)に国家功労勲章シュバリエ(騎士)を授与した。東京の同国大使館で開かれた授与式でフィリップ・セトン大使は、死刑廃止、男女共同参画、従軍慰安婦問題など「長年にわたって人権擁護のために闘った」と福島氏を讃えた。

だが、福島氏は前任党首の故土井たか子氏らと一緒になって、日本人多数を拉致した北朝鮮を支援してきた中心人物の一人である。人権擁護というより、最大の人権侵害行為の加担者ではないか。フランスの叙勲には強い違和感を覚える。

拉致の北朝鮮を支援

フランス政府は、福島議員は旧民主党との連立政権当時、内閣特命担当大臣として少子化問題や男女共同参画に取り組んだほか、社民党党首としてジェンダーの平等や夫婦別姓運動を推進するなどし、その功績は大きいと指摘している。

しかし、日本国内の評価は違う。むしろ、拉致問題や従軍慰安婦問題での対応に反発する国民感情は強い。社民党など左派勢力への支持は減り続け、5月のNHK世論調査で社民党支持はわずか0.2%と消滅寸前にまで追い込まれている。

フランスの国家功労勲章には一等級のグランクロワ(大十字)から五等級のシュバリエまであり、日本人もこの10年間で約150人が受章している。近年では、安藤忠雄(建築家)、コシノジュンコ(ファッション・デザイナー)、故高田賢三(同)の各氏が受章しているが、安藤氏はシュバリエ受章の後、三等級のコマンドールも授与されている。

自国のイメージを高めてくれた貢献者を積極的に叙勲するのはフランスだけではない。国内の叙勲でも首を傾げるケースがある。河野洋平元衆議院議長は2011年、勲一等桐花大綬章を受章した。1993年、宮沢内閣の官房長官として慰安婦問題で謝罪と反省を表明、これが今日まで「性奴隷」といういわれなき海外からの批判を招く結果となり、日本のイメージを傷つけている。

朝日新聞が一連の従軍慰安婦報道が間違いであると謝罪、記事を撤回したのは2014年で、河野氏が叙勲を受けた後ではあるが、最近も河野氏は中国の共産党建党百年に当たり、祝電を打っていたことが明らかになっている。

在日大使館は勉強不足

2009年のノーベル平和賞は、当時まだ現職にあったバラク・オバマ米大統領に授与された。チェコ・プラハで「核兵器廃絶の誓い」を表明するなど核廃絶に積極的な姿勢をみせたことが評価された。実績がなくても、演説だけで平和賞を受賞できるのか、と選考委員会は揶揄された。

むしろ、1987年、ベルリンで「この壁を壊しなさい」と訴えた当時のロナルド・レーガン米大統領こそ平和賞に値するのではないか。強い対ソ政策で実際、その後まもなくベルリンの壁は崩れた。米ソ冷戦を終結に導いた実行力こそ真の平和賞に値する。

今回のフランスの叙勲について、違和感を覚えるのは日本人だけではないようだ。エジプト出身の外国人タレント、フィフィさんは、早速ツイッターで、「フランス大使館は勉強不足ではないか。(拉致問題についての国民感情を肌で感じている)日本人スタッフも多数いるだろうに」と手厳しく批判している。

福島氏への国家功労勲章授与は、むしろフランスのイメージ・ダウンになったのではないだろうか。