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2021.10.04 (月) 印刷する

北のミサイル発射、分析より対処法語れ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

北朝鮮がミサイルを発射する度に、官房長官は「情報の収集・分析に万全を期す」「北朝鮮に対しては厳重に抗議する」と、北にとってみれば〝蛙の面に水〟の声明しか出さない。報道も金正恩が立ち会っていたのかとか、専門家の意見として何故この時期に発射したのかといった北の政治的意図等を分析するのに忙しく、最も肝心な「これらのミサイルにどう対処すべきか」といった議論が全くなされないのはどうしたことか。

迎撃難しい変則軌道・超音速滑空

日本の弾道ミサイル防衛は大気圏外の上空で撃ち落とすイージス・システムと落下直前に迎撃するパトリオット・ミサイル3(PAC3)の二重構造となっているが、9月15日に北が鉄道車両から発射した大気圏内で変則軌道を描くミサイルや、28日に発射された「極超音速滑空ミサイル」は、迎撃が極めて困難である。

これらに対処するためには発射前か、発射直後の速力が未だ出ていない時に撃ち落とす以外にないが、それは敵ミサイル発射源への攻撃になる。そうした攻撃ミサイルを迎撃する能力を保持するために北は30日、対空ミサイルの発射実験を行った。

イージス・システムのレーダーでは、レーダー水平線下の目標を探知することはできない。ミサイルの燃料が液体の場合、燃料注入は発射直前に行わなければならない。その動きは情報収集衛星で探知できる可能性はあるが、北は液体燃料でも注入に時間を要しないアンプル化を行いつつある。
従って、こうしたミサイルの発射を探知するためには発射時に放出される熱源を上空の衛星から赤外線で探知する以外にない。

核攻撃対象となっても呑気な日本世論

PAC3のミサイル部分強化型であるMSE(Missile Segment Enhancement)やイージス艦から発射する長距離対空ミサイルであるSM-6を取得することにより、北が9月11日と12日の両日発射したような巡航ミサイルにも対応できるようになる。

また将来的な迎撃手段として、ミサイルだけでなく高出力マイクロ波やレールガン、それに滞空型無人機も活用しなければならないであろう。防衛省は令和4年度の防衛予算で、上記のような迎撃システムの取得や調査研究、それに赤外観測衛星を多数配置した衛星コンステレーションの概念検討費を要求している。

夏に出された令和3年防衛白書では北を「わが国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる」と書いてある。自国が核兵器で攻撃される能力を北が保有しているというのに、余りにも呑気な声明やメディア報道ではないか。