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2025.11.25 (火) 印刷する

石垣島の核シェルター準備を視察した 奈良林 直(北海道大学名誉教授)

「存立危機事態」をめぐる立憲民主党議員らによる国会での執拗な質疑に対する高市早苗首相の国民の命と財産、領空・領海を護る毅然とした答弁を高く評価したい。ロシアのウクライナ侵攻に伴う核使用の恫喝、中国の核戦力増強、北朝鮮の多数のミサイル発射、それに伴うJ アラート警報や日本政府による非難声明が繰り返されるなかで、我が国の有事の避難施設(いわゆる核シェルター)の普及率はほぼゼロである。スイスやノルウェーはほぼ100%、欧米主要国は 80%もの普及率となっていて、有事の際に国民を守る態勢が整備されている。唯一の被爆国日本が弾道ミサイルの飛来と爆発に対して無防備なのだ。

活発化する中国海軍の動き

近年、尖閣諸島(沖縄県)周辺海域では、中国海警船がわが国の領海への侵入を繰り返し、中国海軍も活動を活発化させている。尖閣周辺以外でも、2024年8月には中国海軍艦艇が口永良部島(鹿児島県)南西のわが国の領海内を航行し、同年9月には空母「遼寧」が沖縄県の与那国島と西表島の間のわが国の領海に近接した海域を航行した。

このような状況下で、わが国では事態対処法に沿って、武力攻撃事態等への対処に関して必要となる個別の法制の整備が進められた。国民保護法はその一つである。同法では、武力攻撃から国民の生命・身体・財産を守り、国民生活等に及ぼす影響を最小にするための、国・地方公共団体等の責務、避難・救援・武力攻撃災害への対処等の措置が規定されている。

建設へ早急な法整備が必要

筆者は、特定非営利活動法人・日本核シェルター協会の顧問として現状把握のため、11月19、20の両日に沖縄県先島諸島の石垣島を訪問して、地元の建設土木会社の案内で、海上保安庁や空港の非常用ディーゼル発電機の燃料タンクやその設置工事を視察し、石垣市庁舎で核シェルターの準備状況について説明を受けた。

石垣市の説明によると、核シェルターの基本設計の概要は以下の通りだ。

(1)核シェルターは500人収容の規模とする計画だ。有事には、他国の空母などの運行状況を基に、政府が総合的に判断して、5万人の住民に島からの避難指示を出すが、避難できない人と、石垣市のインフラを守る職員をシェルターに収容することを計画している。隣接して市の大病院もある。平時には市庁舎の来訪者の地下駐車場として利用し、地上部分は市民のための公園にする予定だ。

(2)しかし、核シェルターに関する法制度や規格が無いため、シェルター内には、一般的な避難施設として簡易ベッド等しか設置できない。建築基準法や消防法の規制があって、大きい堅牢な地下燃料タンクが設置できない。また、都市計画の用途指定があって、そもそも地下シェルターを簡単には建設できない。沖縄県の玉城デニー知事が建設に消極的なこともあって、核シェルターとしての住民説明もできないのが実情だ。一方で、シェルターは台風や暴風雨の災害対策として使用することもできる。普段は地下駐車場として使うなど、設置のメリットが出る工夫が必要だ。

(3)宮古島など先島諸島の他の島でも、武力攻撃への危機意識は非常に高い。

(4)沖縄の諸島の海運手段はフェリー程度で、大型トレーラーやクレーン車は大きすぎて運べない。シェルターに必要な空気浄化システムは分解して運搬する必要がある。また、日本本土と異なり、港湾の荷揚げ設備も強化しなければならない。島内の自衛隊基地の用に供するために地元には生コンクリート工場があるので、現地で生コン車を用いてコンクリートを運搬する方法が現実的である。

以上の石垣市の説明を聞き、沖縄でのシェルター建設や関連工事を進めるため、核シェルターに関する法制度や規格を早急に整備する必要があると実感した。自民党のシェルター議連が主導して、年明けの通常国会で法案を早期に成立させることを期待したい。

沖縄離島の避難訓練を本土でTV中継せよ

石垣島滞在中は、フェリーなどの船舶や民間航空機を使った宮古島の避難訓練の様子がニュースで報道されていた。指示を出している自治体関係者は「少しでも実効性を高める工夫をしている」と述べ、訓練を何度も繰り返している緊張感が伝わってきた。「存立危機事態」がまるで発生しないかのような国会での「平和ボケ」の野党質問との大きなギャップを感じた。このような緊迫した訓練は、日本列島の隅々まで、テレビで中継されるべきだ。

国内でも多くの自治体で防災訓練の一環として避難施設へ誘導する訓練が実施されている。東京都の小池百合子知事も、核シェルター協会主催のフォーラムで、堅牢さはともかく、都民の避難指定先(地下街、地下駐車場、地下鉄の駅、小中学校の体育館)は全都民を収容できるまでに達したことを強調していた。今後、更に整備が必要だ。

一方、石垣島には台湾からの大型クルーズ船が到着し、島内は多くの観光客の笑顔であふれていた。宮古島では中国政府の「訪日自粛」の指示により、中国からの遊覧船がUターンしたことがテレビで報道されていた。立憲民主党の岡田克也元外相の高市首相に対する執拗な国会質問に端を発した中国の過剰反応は、中国国民の日本旅行に影響を及ぼした。しかし、11月下旬の3連休中の日本各地は多数の観光客であふれており、インバウンドへの経済的な影響は軽微であるようだ。

石垣市庁舎前の大型シェルター建設予定地(地下に設置)