米中両国は、トランプ大統領と習近平国家主席による今月の北京における首脳会談で、「建設的な戦略的安定関係」(constructive relationship of strategic stability)を築くことで一致した。トランプ政権が1期目に中国を「戦略的競争相手」(strategic competitor)と位置付けていたことから一変した。戦略的競争から戦略的安定へのスローガンの変化が何を意味するのか、日本は神経を研ぎ澄ます必要がある。
「新型大国関係」の焼き直し
中国側の説明によると、「建設的な戦略的安定関係」とは、協力を主体とし、適度な競争を行い、意見の相違をコントロールでき、平和を見通せる安定を意味する。そして、平和共存のカギの一つとして「相手の核心的利益の尊重」を掲げた。すなわち中国が「核心的利益のうちの核心」と位置付ける台湾問題に米国が干渉しないことが安定した関係の前提であるとした。
米側はホワイトハウスのファクトシートで「建設的な戦略的安定関係」の構築で合意したことを確認する一方で、この関係の基礎には「公平性と相互主義」(fairness and reciprocity)があると書き加えた。貿易の公平さと経済的な相互主義を安定的な関係を築く条件にしたのである。つまり、米中は共に「建設的な戦略的安定関係」の構築を唱えても、重点の置き場所がまるで違う。
習政権は2013年の発足早々、当時のオバマ米政権に「新型大国関係」の構築を呼び掛けた。オバマ政権は、大国が台頭する時、既存の大国と戦争になる歴史を米中は繰り返さず、大国同士の新たな関係を築くという意味であると解釈し、危うく受け入れるところだった。しかし、中国が核心的利益の相互尊重を新型大国関係に含めていることが分かったため、ぎりぎりでとどまった。
今回、習主席が提案した「建設的な戦略的安定関係」は、いわゆる「トゥキディデスのわな」を引用して米中衝突の危険を警告している点も含め、新型大国関係の焼き直しである。にもかかわらずトランプ政権は、この新しいスローガンを条件付きながら受け入れた。
「頭越し」取引を警戒せよ
米中関係の定義が戦略的競争から戦略的安定に変わっても、米中の世界規模の覇権争いがなくなるわけではない。しかしトランプ政権には、経済・貿易分野における米国の短期的利益と引き換えに、中国のいわゆる核心的利益を尊重してしまう不安が付きまとう。米中関係が安定するのは良いとしても、日本の国益を無視した「頭越し」の取引には警戒しなければならない。(了)




