米中首脳会談の評価として多くの識者やメディアは「中国優勢」と評価している。しかし、それは主として経済・外交面での評価で、軍事的にはホルムズ海峡付近における米海軍の逆封鎖は、エネルギーの多くを中東に頼っている中国に相当効いていると筆者は思料する。
中国人民解放軍はここ数年、台湾に対する海上封鎖の訓練を何回も行っているが、これに対して米海軍が中国のエネルギールートを逆封鎖すれば、それは中国にとって大きな打撃となろう。中国に対する海上封鎖は、これまで米国の多くの研究者が研究かつ発表してきたが、それを実行動に移したで点で、現在の米海軍の対イラン逆封鎖は意義が大きい。
米国における過去の論考
筆者が四半期毎に購読している米軍事専門誌に、かつて中国に対する海上封鎖に関する論文が掲載された。「米海大紀要(Naval War College Review)」2018年春号に掲載された「中国に対する海上石油封鎖(A Maritime Oil Blockade Against China)」と、「ジョイント・フォース・クオータリー(Joint Force Quarterly) 」2024年第4四半期号に掲載された「中国との長期戦における近代的封鎖の有効性思考(Considering the Utility of Modern Blockade in a Protracted Conflict With China)」である。
前者の論考は副題に「戦術的には魅力的だが戦略的には欠陥がある(Tactically Tempting but Strategically Flawed)」とあるように、戦略的には中国がエネルギーをロシアに頼ってしまう欠陥を指摘しているが、現在米国政府はロシアから中国へエネルギーを供給・輸送する企業や関連金融機関に対し、制裁措置を強化しており、論考が掲載された2018年時点と状況は異なっている。
後者は、第1次世界大戦におけるドイツや第2次世界大戦における日本の例を挙げ、現代中国の海上交通路に対する不安から、その弱点を同盟国と協力して突くべきだと結論で述べている。
中国周辺で米国と協力して中国に対する海上封鎖に協力できるのは日本であるが、その肝心の日本は「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使する」という「専守防衛」の呪縛に囚われて、対中海上封鎖の発想を有していない。
専守防衛は兵理上も現実面からも間違い
ボクシングでも剣道でも、守る事を専らにしていたら、いつかは相手に敗北する。したがって「専守防衛」は兵理上の誤謬である。
また専守防衛の原則として「日本を守るために必要最小限のものにとどめる」とされているが、現実の世界を見れば、核兵器を保有している中国、ロシア、北朝鮮といった周辺国のどれ一つをとっても「必要最小限」で我が国の防衛を全うできる対象国は存在せず、現実離れした政策だ。さらに言えば、自衛隊は東日本大震災でも熊本や能登半島の地震でも、災害派遣では全力投球で対応しており、それよりも烈度がはるかに高い防衛出動において「必要最小限」で任務を全うできるはずはないではないか。(了)




