12月14日、さわかみ投信会長の澤上篤人氏は、国家基本問題研究所の企画委員会で、世界の経済状況や日本の財政問題などについて語り、その後櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
まず、世界経済を概観すると、70年代80年代にかけて欧米経済は低迷したが、①発展②成長③成熟という経済の段階からいうと、成熟期を迎えたことを示す。今の中国は成長期にあたり伸びるのは当然だが、そのうち成熟期を迎える。その時どうするかが一つの山場だろう。日本経済は外資に頼らずに成長した点が外国とは異質だが、すでに成熟期の中でもがいている状態だとした。
次に、日本の財政問題については、国の予算が約98兆のところ、税収が57兆なので41兆が赤字。そのうち国債が35兆で、国の予算の40%前後が赤字国債となり、これが毎年膨らむから、既に財政破綻していることは素人でも分かると指摘。
この低迷する日本経済と破綻財政の対応策として、個人金融資産の活用を上げた。個人の預貯金率が諸外国に比べ高いわが国は、これが消費に回ることで経済が活性化し、税収アップにもつながるという。
例えば、成熟した社会では飽和状態となり易いモノの消費より、モノではない飲食やサービス業、芸術鑑賞などが経済を押し上げる一助となる。またマイナンバーを徹底して、不公平感なく確実に税収に結び付けること、あるいは貧困層救済のための資金援助を念頭にした「寄付」行為を督励することなどを提案した。
最後に、細かい特例を多数設けた「租税特別措置法」など、既得権益の温床となっているような複雑な税制体系を改めるなど、わが国の経済活性化のため官民挙げて地道に努力することが必要であると強調した。
澤上氏は1947年生まれ、愛知県出身。1971年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。96年にさわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立し、99年には「さわかみファンド」を作り長期運用のパイオニアとなった。現在もさわかみ投信会長として長期投資の啓蒙活動をしている。
(文責 国基研)