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2020.02.18 (火) 印刷する

札幌高裁控訴棄却判決について

5年前、朝日新聞の元記者の植村隆氏より、私は慰安婦問題に関する報道で植村氏の名誉を毀損したとして、損害賠償訴訟を起こされました。

2018年11月9日、札幌地裁で櫻井完全勝訴の判決をいただきました。このたび2020年2月6日には札幌高裁でさらに踏み込んだ完全勝訴の判決をいただきました。以下にご報告いたします。

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PDF 札幌高裁控訴棄却判決について3
 

植村隆氏による札幌高裁控訴棄却判決について

2020年2月7日
櫻井よしこ弁護団

1.2020年2月6日、札幌高等裁判所は、植村隆氏の控訴を全て棄却する判決を言い渡しました。

元朝日新聞記者の植村隆氏は、ジャーナリスト櫻井よしこ氏に対する名誉毀損請求を全て棄却した札幌地裁判決(平成30年11月9日付)を不服として、札幌高裁に控訴していましたが、2020年2月6日、札幌高裁もまた、植村隆氏の控訴を全て棄却する判決を言い渡しました。

(詳細)
① 控訴審判決は、多岐にわたる控訴理由の全てについて理由がないと判断しました。
例えば、植村氏が主張した櫻井氏の取材の不十分さについては、判決は、少なくとも植村氏が署名入りで1991年8月11日付け朝日新聞に、「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり」というリード文をつけた記事が真実に反することを知る上では、十分な取材をしており、これに基づく「捏造」判断は合理的であると判断しました。

② また、植村氏の記事は、朝日新聞という何百万人の読者を持つ巨大メディアの記者としての署名記事であり、控訴審判決も、一審判決と同様、櫻井氏による論評ないし意見が原告に対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評の域を逸脱しているということはできず、櫻井氏の執筆掲載は公共の利害に関する事実に係り、かつ、専ら公益を図る目的にある、と認めました。
 

2.慰安婦問題の真実を知るために:よくある質問への回答

「日本軍が韓国人女性を性奴隷として20万人動員し、戦後その多くを虐殺した」というのは国際的に流布された誤解です。しかし、日本の公権力が韓国人女性を慰安婦として強制連行した事例はありません。

Q1:どのように、「慰安婦が強制連行された」という見解が広まったのですか?

A:「慰安婦が強制連行された」という見解が広く流布された原因は、1983年、吉田清治氏(故人。ペンネーム)自ら、「女子挺身隊を集めよという日本軍の命令を受けて、韓国の済州島で、奴隷狩りのような慰安婦の強制連行を実行した」という虚偽の事実を捏造して発表したためです。

(詳細)
女子挺身隊制度とは、国家総動員法に基づく労働動員であり、公権力による動員です。この本の内容は、当時、日本の代表的な新聞社である朝日新聞により、あたかも事実であるかのように繰り返し、大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えました。

しかし、吉田氏の証言には裏付けになる証拠・証言が全くありませんでした。むしろ、済州島現地住民の多くがそのような事実はなかったと主張するなど、当該書物の内容は、後に複数の研究者により、完全に想像の産物であり、虚偽・虚構であったことが既に証明されています。また、国家総動員法に基づく女子挺身隊制度が慰安婦とは全く関係がなかったということも確認されています。
 

Q2:なぜ、植村氏による朝日新聞1991年8月11日付けの署名記事は「捏造」といわれているのですか?

A:植村氏は、女子挺身隊と慰安婦は無関係であることを知りながら、金学順さんについて、公権力による動員を意味する、「女子挺身隊」の名で戦場に連行された「朝鮮人従軍慰安婦」の生存者である、と報道したからです。

(詳細)
① そもそも、朝日新聞は、吉田氏が捏造した日本軍による強制連行という虚構を、加害者の告白として事実であるかのような大々的なキャンペーン報道を繰り返し、吉田詐話に合致する被害者(慰安婦)を探していましたが、(当然のことながら)見つけることはできませんでした。そうした中で、元朝日新聞記者植村隆氏は、1991年8月11日朝日新聞で、元慰安婦の金学順氏について「女子挺身隊の名で戦場に連行され」た慰安婦の生き残りを発見したという署名記事を書いたのです。加害者の吉田氏の詐話に合致する被害者の発見という記事は、吉田氏が捏造した日本軍による強制連行という虚構を人々に信じさせる上で、重大な意味を持つ記事でした。同年12月、金学順氏を含む元慰安婦3名は、元朝鮮人戦時労働者(いわゆる元徴用工)やその遺族らと共に、日本政府の賠償責任を追及する訴訟を提訴し、日韓のメディアが「慰安婦問題」を取り上げ、日韓の外交問題に進展していきました。

② 植村氏の記事から23年後、朝日新聞は、2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、記事を記載し、初めて事実関係の誤りを認め、正式に吉田氏の詐話に関連する全ての記事を取り消しました。朝日新聞は、この間の23年もの間、日本軍による強制連行という虚構を捏造した記事を訂正しませんでした。植村氏も、今回の訴訟の尋問においてはじめて、金学順氏が女子挺身隊ではないという事実を知りながら、「『女子挺身隊』の名で戦場に連行された」という記事を書いたことを認めましたが、それまで一切、真実を語ることはありませんでした。
 

Q3:クマラスワミ報告書(注:国連人権委員会から女性に対する暴力に関する特別報告官に任命されたクマラスワミ女史が1996年に同委員会に提出した報告書)は、日本軍が、国家総動員法に基づく挺身隊として、韓国人女性20万人を、慰安婦すなわち「性奴隷」として、奴隷狩りのように強制的・暴力的に連行した、と報告しています。これは誤りなのですか?

A:誤りです。クマラスワミ女史の報告は誤った虚構に基づいて作成されたものです。

(詳細)
① クマラスワミ報告は11の根拠を挙げていますが、いずれも、すでに真実でないことが証明された、A)国家総動員法による慰安婦動員とB)吉田清治の詐話という「虚構」を前提として構成されており、客観的な実証性が認められないものです(11個のうち10個がジョージ・ヒックス「性の奴隷 従軍慰安婦」(三一書房 1995年)からの引用であり、1つが吉田清治の詐話です。ジョージ・ヒックスの著書も吉田詐話を「事実」として引用しています。)。

② 日本政府は、民間業者に対する慰安所の設置や慰安婦募集に関する要請及び慰安所の管理及び慰安婦の移送の点では日本軍の関与を認めています。ただし、それ以外の「軍の関与」はなく、日本軍が強制・暴力的連行を行った事実はありません。

③ 2007年以降、米国議会、EU議会などで、慰安婦問題で日本政府の責任を追及する決議がなされていますが、そのすべてがクマラスワミ報告を主要な論拠としており、やはり公権力による慰安婦強制連行があったという虚構が前提とされています。虚構に基づくクマラスワミ報告書を論拠とする、これらの決議は見直されなければなりません。

④ 慰安婦の「20万人」という数字は具体的裏付けの全くない数字です。「20万人」という数字の元となった用語集を書いた朝日新聞は、上記の23年ぶりの訂正記事(2014年8月5日付)において、女子挺身隊は、「将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別物」であることを認めた上で、「20万人」との数字の元となったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、慰安婦を誤って混同したためで、完全な間違いであったことを認めています。

⑤ また、一部で日本軍が戦争直後、多くの朝鮮人慰安婦を虐殺したという風説が国際社会に流れていますが、これも全く事実無根です。そのようなことがあれば当然、戦争犯罪としてとして連合国により裁かれていたはずですが、その事例は一件もありません。

⑥ 「性奴隷」といった表現も事実に反します。慰安婦は、売春が禁止されていなかった時代の公娼です。第二次大戦後の連合国による調査※1によれば、ビルマ(ラングーン)において、日本軍兵士は軍法により現地人女性との性的接触を禁止され、公娼である慰安婦を平均2円50銭で買春することができたこと(中には結婚する者もいたこと)、慰安婦には客を断る権利があったこと、慰安婦は売り上げの半分を受領し、交通費、食費、医療費は無料という条件で雇用されていたこと、慰安婦は兵士からの贈り物に加えて、町に買い物にでたり、将兵とともにスポーツ、ピクニック、演芸会、夕食会に参加していたこと、家族への前渡金及び利息を弁済すれば無料で朝鮮に送り返されたこと、などが報告されています。

⑦ 日韓でベストセラーとなっている、韓国の学者・李栄薫氏らの実証研究に基づく「反日種族主義」においても、「貧困階層の女性たちに強要された売春の長い歴史の中で、1937年から45年の日本軍慰安婦だけを切り離し、日本国家の責任を追及しました。彼らは人道主義者でも、女性主義者でもありません。民族主義者、いや、乱暴な種族主義者でした。」(日本語版288頁)と記述しています。
 

Q4:慰安婦の強制連行が虚構なら、なぜ、宮澤首相など日本の歴代首相や河野洋平官房長官談話(1994年)は、元慰安婦の女性たちに謝罪したのですか?

A:慰安婦の強制連行は虚構であり、売春が法的に禁止されていなかった時代に民間業者の募集に応じて売春に従事した慰安婦に対して、日本政府が法的責任を認める余地はありません。
しかし、上記のとおり1990年代から朝日新聞等が、吉田詐話に基づく強制連行説の虚構を、あたかも事実であるかのように大きく報道して、韓国の国民の反日感情を焚き付けた結果、重大な外交問題となり、韓国政府から「謝罪の意思を示せばこの問題は終わりにする」と言われたこともあり、日本政府は、慰安所の衛生管理等での日本軍の関与を認めたうえで、貧困のため性を売らざるを得なかった元慰安婦に対する道義的な謝罪を行ったものです。

(詳細)
① 1992年1月、宮沢喜一首相が訪韓し、廬泰愚大統領との首脳会談でこの問題が取り上げられました。植村氏が女子挺身隊として戦場に連行されたと紹介した金学順氏ら元慰安婦3名と元徴用工と称する人々は1991年12月に日本政府に対する国家賠償訴訟を提訴し、当時、朝日新聞をはじめとする日韓のマスコミは、公権力による慰安婦強制連行があったのに日本は責任を認めていない、と大々的に報道し、宮沢首相は8回謝罪を繰り返しました。

廬泰愚大統領は1年後に「(慰安婦問題は)実際は日本の言論機関の方がこの問題を提起し、我が国の国民の反日感情を焚き付け、国民を憤激させてしまいました」(「文藝春秋」1993年3月号)と述べています。

宮澤首相が謝罪した当時、日本政府は公権力による韓国人慰安婦強制連行を事実として認めていませんでした。それなのに、謝罪してしまったので、あたかも公権力による強制連行があったかのような誤解が国際的に生まれてしまいました。

② 1994年8月河野洋平官房長官の談話でも、よく読めば、日本政府は「公権力によって韓国人女性を慰安婦として強制連行したこと」は認めていません。しかし河野談話は、韓国政府から日本政府としての謝罪の意思を明確に示してほしい、そうしてくれれば、韓国政府としてはこの問題は終わりにするという意向が伝えられ、日本政府がそれに答えて出したものであったため、事実をきちんと説明せず、曖昧でわかりにくい表現を多用しています。宮澤首相の謝罪の結果、誤解が広まっていた中、曖昧でわかりにくい表現の河野談話をだしたことによって、国際社会の誤解を助長してしまったのです。

③ 河野談話発表の直前、日本政府は韓国に住む元慰安婦16人の聞き取り調査を実施しました。2013年、政府内部文書の暴露によってこの時の調査が、裏付け調査を一切行わず、矛盾する事項への確認質問すら行っていない、極めてずさんなものであったことが明らかになりました。また、16人のうち約4割の6人は、戦場ではなかった日本本土(大阪2人、熊本1人、植民地だった台湾3人)で慰安婦になったと話していました。

④ しかし、日本政府が何度、謝罪しても、何度、金銭を支払っても、韓国政府と正式に不可逆的な最終解決を合意しても、今なお慰安婦問題は蒸し返されています。結局、このような安易な謝罪は国際的誤解を呼んだだけであって、外交的失敗と言わざるを得ません。
 

Q5:なぜ、櫻井よしこ氏は、2014年の論稿において、1991年の植村氏の記事を捏造と論じたのですか?

A:櫻井氏は、すでに1997年ころから、強制連行説の虚構性を指摘して、1992年、1994年の日本政府の安易な謝罪が、国際的誤解を招くことについて警鐘を鳴らしてきました。

2014年の論稿は、1983年の吉田詐話を事実と扱った朝日新聞報道による虚構の強制連行説を根拠とする1996年のクマラスワミ報告、その誤った報告を根拠とする2007年以降の米国議会、EU議会の日本政府の責任を追及する決議など、国際的に広まった誤解を正すべきであるという、ジャーナリストとしての使命感から、発端となった1991年8月の朝日新聞記事の問題性を論じたものです。
 

Q6:なぜ、慰安婦問題の虚構性を批判したジャーナリストや学者個人に対して、次々と名誉毀損訴訟が提訴されているのでしょうか?

A:それは慰安婦「問題」が虚構(作られたもの)であるという批判を封じるためであると考えられます。

慰安婦問題などでの日本国の責任を問うキャンペーン活動を行ってきた側が、それを批判した学者や言論人個人に対して、名誉毀損による損害賠償請求訴訟を提起して、批判を封じるということが、この数年来、続いています。

高木健一弁護士は平成25年に西岡力氏を提訴しましたが、一審判決は高木氏の請求を棄却し、控訴・上告したが覆らず、高木氏の敗訴判決は確定しています。

平成27年、植村氏は、個人の学者である西岡力氏や、個人のジャーナリストである櫻井よしこ氏に対して、事実的・法律的な根拠を欠く名誉毀損訴訟を提訴することによって、自らの立場と異なる言論の自由を委縮させようとしています。

訴訟を使って言論の自由を奪うのは、言論機関として自殺行為です。元朝日新聞記者であり、現在は「週刊金曜日」代表取締役社長である植村氏が、慰安婦問題に関する自己の運動の場として訴訟を濫用する行為を、これ以上、許すことはできません。

以上


^※1Japanese Prisoner of War Interrogation Report No.49 / United States Office of War Information

 

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