公益財団法人 国家基本問題研究所
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2020.04.21 (火) 印刷する

【詳報】 第4回 日台交流会議

令和2年2月17日(月)、台北にある台湾のシンクタンク・台湾安保協会で、第四回日台交流会議が行なわれた。国家基本問題研究所からは、冨山泰研究員と太田文雄研究員が参加した。

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前列向かって左から冨山、李、太田、陳。後列向かって左から徐、荊、蔡、廖、ノンフィクション作家の龔昭勲、郭の各氏。

【参加者】
台湾
陳重光 台湾安保協会理事長 
李明峻 台湾安保協会副理事長
荊元宙 国防大学中共軍事事務研究所教授陸軍大佐
郭永興 国立台中科技大学教授
廖雨詩 民進党青年部長
蔡錫勲 淡江大学日本政経研究所所長
徐浤馨 淡江大学日本政経研究所教授

国基研
冨山泰 企画委員兼研究員
太田文雄 企画委員兼研究員

 
まず、台湾安保協会理事長の陳重光氏の歓迎の挨拶から始まり、第一セッションでは、「台湾海峡の軍事バランスと日本の役割り」と題し、太田研究員と荊元宙・国防大学中共軍事事務研究所教授陸軍大佐が報告をし、冨山研究員、李明峻・台湾安保協会副理事長を交えて討議を行った。

第二セッションでは、「台湾総統選の総括と蔡英文二期目の方向性」について、郭永興・国立台中科技大学教授、廖雨詩・民進党青年部長、蔡錫勲・淡江大学日本政経研究所所長、徐浤馨・同研究所教授らと活発な意見交換をした。

民進党の青年部長でかつシンクタンクに所属している廖雨詩女史の報告では、蔡英文政権二期目の政策方針は、①経済構造のイノヴェーション(生産性と競争性の向上)、②社会のSafety Netとしての年金改革、③情報公開制度改革、④中国との関係(現状維持をしつつ米国の力を取り込むことを同時に追求)、そして⑤台湾は国交を失う国が増えているが、実質的には米日との関係強化によって外交力が向上しているとした。

新型ウイルス問題では、南向政策で、過去ASEAN諸国と40年の経験がある日本に学ぶ、という。

廖女史は総統選の前に毎朝毎晩、中国発の偽情報をチェックしてfacebookから削除していたとも報告した。

安保協会の李明峻副理事長は、蔡英文政権の今後の課題として、①ピークとなった支持率の低下を如何に防ぐか、②日米の圧力をどう扱っていくか(米国の豚・牛肉輸入、日本とは福島近隣五県農産物の輸入解禁)、③民進党内の派閥コントロールと2022年の統一地方選、④新しいリーダーの育成と長老の不規則発言コントロール、⑤独立派(WHOや国連加盟を主張)や若者へのアピールなどがある、と述べた。

日本との貿易交渉の裏方として実質的に働いている郭永興国立台中科技大学教授からは、福島近隣五県農産物禁輸解除の見通しと、台湾が採ろうとしているアプローチについての説明を受け、2018年の住民投票で78%が福島近隣五県からの農産物輸入に反対しており、再び住民投票を行っても勝ち目がない。特に国民党は、「核食」とのキャンペーンを行って、禁輸解除活動を妨害している。

可能性ある解決策としては、輸入食品安全法のような包括的な法律を成立させて解除に踏み切るか、あるいは台湾の豚肉輸入を日本が受け入れることによって、数十年間一貫して台湾側の赤字である日台間の貿易収支を改善させることで好循環を作り出し、一歩一歩(福島周辺県から少しずつ)改善すること方向で根回ししていきたいとのことであった。

また、同氏は、これまで外務省中国・モンゴル課の台湾担当と折衝し、台湾がかけている日本産の酒等の関税40%から25%にまで下げる交渉を行い、台湾側にとっては数億台湾元のマイナスとなったとの実績を披露した。

荊元宙国防大学中共軍事事務研究所教授は現役の陸軍大佐であり、かつて台湾陸軍の情報部に勤務していた経験から人民解放軍の最近の動静について説明を受けたが、驚くような内容はなかった。

中国と日本の政治情勢に詳しい淡江大学の蔡教授は、今回の新型コロナウイルス問題で、習近平政権が倒れる可能性はなく、対外的に香港や台湾に武力行使をする可能性も低いという予測をした。

全般的に台湾側が、日本が中国の顔色を気にし過ぎているとの指摘をしていたのが、印象的であった。

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発表する荊陸軍大佐(中央)。左は蔡錫勲淡江大学日本政経研究所所長

2017年に行った第二回日台交流会議で台北を訪問した時と比べ、民進党政権の政策決定や農産物交渉で日台間の裏方交渉といった政策に直結した安保協会外の学者が参加した今回の会合は、政策に反映できる実質的な意見交換ができた。

科学的には全く根拠がない福島近隣五県産農産物の輸入制限解除は、そう簡単には進まないという印象がある。WTOのルールを規範とする日台のFTA/EPA締結、さらにはTPP11への加入は困難であろう。このため、早急に日台の経済関係改善に向けて政策提言を行う必然性は乏しいように感じられた。

頼清徳副総統訪日を促進する件に関しては、民進党で米国主要シンクタンクと交流している廖雨詩女史によれば、米国内には、頼清徳を陳水扁元総統のような現状を変更する危険勢力と捉える向きもあることから、この点にも留意する必要があるとのことだった。

我々が帰国した翌日の19日、ランディー・シュライバー前国防次官補は、台湾安保協会の一員でもある林彦宏博士が所属する国防部系シンクタンク国防安全研究院で、日米台安保対話に期待する旨の講演を行なったが、依然として台湾国防部や軍には国民党の勢力が根強く、貴重な情報が北京に筒抜けになる危険性がある。このため米国はF-35のような最新の戦闘機は台湾に供与していないという。