月例研究会/令和4年4月27日/東京・内幸町イイノホール
最前線に立った日本
令和4年4月27日、国家基本問題研究所は定例の月例研究会を東京・内幸町のイイノホールで開催。河野克俊・前統合幕僚長、田久保忠衛・国基研副理事長が登壇、櫻井よしこ理事長の司会で進行しました。講演と議論の一部をご紹介します。
河野 克俊(かわの かつとし) 前統合幕僚長 |
櫻井 よしこ(さくらい よしこ) 国基研理事長 |
田久保 忠衛(たくぼ ただえ) 国基研副理事長 |
河野克俊 前統合幕僚長 一般に言われている通り、プーチン大統領は今度の「ウクライナ戦争」は短期決戦で行けると考えたんだと思います。プーチン大統領は昨年の四月に論文を出していますが、そこには、ウクライナはもともとはロシアのものであると書いています。つまり、「ウクライナが大きな顔をして独立国家であるということ自体がおかしい」、ましてや「NATO(北大西洋条約機構)に近づくなんてことはあってはならないことだ」ということなんです。従って、プーチン大統領が今回起こした戦争は、ウクライナを中立化する、非軍事化するのが目的です。
具体的に言えば、安全保障のためにウクライナにロシア軍を駐留させるということです。だからキーウ(キエフ)を落とそうとした。今、方針転換をして、東部、それから南部を押さえにかかっています。おそらく黒海を押さえて経済的に締めあげるということです。最初はゼレンスキー大統領を追放して一気に非軍事化、中立化しようとしたけれども、迂回作戦で、経済的に締めあげて中立化、非軍事化しようとしているのだと思います。
ただし、今、ロシアは巨大な軍事大国とされていますが、冷静に考えてみたらソ連以来、ロシアは強い軍隊だったのか。日露戦争は日本が勝ちました。また、モンゴルと満洲国との国境付近で起きた昭和十四年の「ノモンハン」は、つい最近まで〝日本が大敗した〟とされていましたが、よくよく調べて見たらソ連の方が負けていた。そういう事実が今、出てきています。さらに、我々はソ連に北方領土を取られ、樺太も、満州も侵攻されましたが、あれはこちらがフラフラになってるところでの火事場泥棒です。
そして「独ソ戦に勝った」とロシアは言いますが、これもドイツが深入りし過ぎて冬将軍に会ってしまった。つまり、ドイツが自滅したからソ連が勝ったんです。
こう考えてみると、ソ連(ロシア)は今まで勝ったためしがあるのか。我々が、のせられていただけじゃないか。もう少し冷静に考えるべきだと思います。
ロシアのような専制独裁国家において、独裁者は軍隊を絶対に信用しません。鉄砲が自分のところに向かって来るかもしれないからです。ですから専制独裁国家において、軍隊は常に監視の対象なのです。
これは中国にも言えることです。中国の場合であれば、各軍の指揮官の横には政治委員がいて、それが軍を監視します。だから指揮系統が非常に複雑でややこしくなります・・・