公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

最近の活動

  • HOME
  • ニュース
  • 日台リモート会議:台湾総統選挙結果の台湾側分析
2024.03.11 (月) 印刷する

日台リモート会議:台湾総統選挙結果の台湾側分析

国基研は3月8日(金)、企画委員会にて、台湾のカウンターパートとオンラインでつなぎ、台湾側は陳南天・台湾安保協会理事長が、日本側は太田文雄企画委員がモデレーターとなり、櫻井よしこ理事長を始め参加した企画委員らと意見交換した。概要は以下のとおり。

台湾側:
陳南天・台湾安保協会理事長(代表)
頼怡忠・遠景基金執行長
蒙志成・成功大学政治学科教授
陳慧蓉・文化大学新聞学科教授 

冒頭、陳南天氏が代表として台湾側参加者を紹介し挨拶した後、櫻井理事長も挨拶し、プレゼンテーションを開始した。

●第1話者 頼怡忠氏「台湾総統選について」
・選挙結果は、民進党の頼清徳氏が勝利したが、立法院(議会)では民進党が過半を失った。その結果、予算案の通過に不安がある他、多くの委員会で野党・国民党が委員長を務めることになる。

・両岸関係について。頼清徳氏は中国から最も嫌われた候補者として選挙戦で様々な嫌がらせを受けた。国交のあったナウルが中国の意向で国交を断絶。さらに中国とは観光目的の交流があるが、金門島をめぐる争いが影を落とす。禁漁区で漁をしていた中国漁船を台湾沿岸警備隊が取り締まった際、死亡者が出たことで、中国本土が政治問題にした。本来は犯罪事件である。さらに中国民間航空機の飛行ルートを台湾側に接近させる等、今後中国は言葉ではなく実行動を伴い過激になる。両岸関係は戦略的緊張を孕みつつ変化の途上にある。

・米台・日台関係について。頼清徳氏は蔡政権の政策を継承する。その中で米国との関係が最も重要とするとともに、日本との関係を今後より積極的に行う。

・就任後の政策について。頼清徳氏が就任したら国内政策に焦点を当てる。特に台湾の若者は住宅や給料の問題に関心があり、特にハイテク産業に雇用されなかった人たちには、経済的恩恵を受けていないという不満がある。したがって、まずは国内の分配の問題を解決することが優先課題となるだろう。

●第2話者 蒙志成氏「台湾の国内政治の動き」
・立法院選挙の結果について。前回の選挙結果と比べると、議席数で国民党が31から52に増やし、民進党は61から51に減らし、第3党の民衆党は5から8に増やした。その理由は、地方首長選挙では国民党と民進党が交互に獲得する顕著な傾向があり、前回国民党が圧勝した結果、立法院選挙にもその影響がでたものと言える。他方、総統選挙で頼清徳氏が成功したのは、蔡英文政権の米中に対する外交政策が評価されたからである。

・立法院での野党伸長の結果、議会では親中派による政治ショー、すなわち混乱が予想される。対する頼清徳氏は政権基盤を確かにするため国内問題に焦点を当てる。若年層に人気のある民衆党の柯文哲氏は、2028年の選挙で相当大きな存在になるだろう。

●第3話者 陳慧蓉氏「総統選における情報戦」
・中国からの情報操作は選挙戦の前からあった。偽情報であっても本物に見えるところが問題で、従前から台湾メディアでは問題視されてきた。特に米国への懐疑論が流布されてきた。例えば、米国は国益の観点から台湾から離れるべきだ、米国は台湾を安全保障の盾にしている、生物化学兵器の拠点にしようとしているといった対米ネガティブ・キャンペーンが統一日報とかチャイナ・タイムズ(中国時報)のような親中メディアで展開された。有識者が語った言葉の一部を切り取り、内容を改変する情報操作の例は見破ることが難しい。

・ライブ配信という手法も広がりを見せる。チャイナタイムズなど、中国寄りメディアはライブ配信を多く行う。視聴者は多くないが、ライブなのでクリック数を高くできる。すると中国寄り動画がネット内で検索上位になる。プロパガンダという観点からは有効であり、ネット内で中国側のレトリックが支配する状況を作り出している。

・5月から新政権となるが、今後デジタル省の人事が注目される。誰が大臣になり、どのような対策をとるのか、安全保障上の対策は取られるのか等が今後の焦点の一つになる。

●質疑応答
・蔡英文政権で兵役を4か月から1年に延長したが、今でも支持されているかとの質問に対し、頼怡忠氏は、台湾生存のため兵役は必要不可欠で、多くの国民に支持されていると回答。加えて、国民の7割は自ら戦うことに賛成だが、他方、独力では戦わないという世論調査結果を示した。

・台湾のフェイクニュース対策についての問いに対し、陳慧蓉氏は、SNSプラットフォームの正しい利用法を教育することと回答。中国が支配するSNSの代表TikTokは教育現場の中でも無制限で使われているが、個人情報を中国側に取られているので米国のように禁止するような啓蒙活動が重要になるとのこと。

・米国の次期政権への準備は進んでいるかとの質問に対し、蒙志成氏は、共和、民主両政権から台湾は支持されてきたとし、準備は行われていると回答。

最後に陳南天氏から、日台は民主的な強靭化を図りながら共に進もうとし、台湾の状況説明と日本側との意見交換に対し感謝の意を示し閉会となったが、大変実りあるリモート会議であった。

(文責国基研)