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2024.06.07 (金) 印刷する

「米国家安全保障への米国第一の取り組み」フレッド・フライツ・元米国家安全保障会議首席補佐官、スティーブ・イエーツ・元米副大統領次席補佐官

6月7日、トランプ前大統領政権で国家安全保障会議の首席補佐官兼事務局長を務めたフレッド・フライツ氏(現アメリカ第一政策研究所AFPI米国安全保障センター副所長)及びAFPIの同僚でチェイニー元副大統領の次席補佐官を務めたスティーブ・イエーツ氏(AFPI上級研究員)の両名が、島田洋一国基研企画委員の紹介で来所した。

両氏は、フライツ氏が編集しイエーツ氏が共著者として先月発刊した書籍“An America First Approach to U.S. National Security”(邦題仮訳『米国家安全保障への米国第一の取り組み』)を基に、米国の次期政権をトランプ前大統領が担うことになった場合の米国政策全般をフライツ氏が、対中政策をイエーツ氏がそれぞれ語り、その後意見交換をした。

【概要】
●フレッド・フライツ氏
今回来日し国基研のような保守的な研究所への訪問は絶対にキャンセルしたくない会合であった。なぜなら、米国では保守的であることが大変難しいことで、我々は団結すべきと考える。AFPIは設立から3年しか経っていないが、元トランプ政権の閣僚や高官によって設立された保守的な研究所なのである。

トランプ政権時の安全保障は、大統領権限の強力な行使を意味する。不必要な戦争に踏み込まず慎重に扱う。同盟国と緊密に協力して重みを応分に負担する。特にNATOの軍事費に独仏などが応分の分担金を払わないことを懸念する。ウクライナ戦争はヨーロッパの軍事衝突なのだから、西欧がウクライナを武装すべき問題としてとらえるべきである。

トランプ氏が大統領に復帰したら、世界の安定を促進する。断固としたリーダーシップを発揮する大統領が現政権の自信喪失を取り戻すことになるのである。

また日米関係においては、トランプ氏と安倍晋三首相とがかつてないほど良好な関係を築いたように、日本との関係を再び大切にするだろう。

アメリカには強いリーダーシップが必要である。政権運営にはアイデアの創出、行動力、スピードが重要である。バイデン政権の判断は遅い。このことは安全保障にとって良いことではない。

●スティーブ・イエーツ氏
中国共産党の本質は不変である。このことを明確に見抜いていた一人が故安倍晋三首相である。そして米国はようやく中国への見方を変えた。習近平主席が登場してから大きく変わった。それまでの中国指導者は牙を剥くが笑顔も保つ。しかし習氏は常に攻撃的で、これまでのリーダーと大きく異なっている。

現在アジアではフィリピンが中国の攻撃対象になっている。そのようなことを誰が想像できたであろうか。この緊張の高まりは米国の弱いリーダーシップの現れでもある。

中国共産党は決して変わらないばかりか、我々に攻撃的でさえある。こともあろうに、中国の外交官がアラスカにきて、米国人に人権や公民権について説教をした。なぜ私たちは彼らの好きなように戦狼外交を許すのか。弱いリーダーシップのせいである。

アメリカ第一主義の観点からすると米国は決して中国との対決を望まない。平和への道を歩み、win-winの関係を築きたいのである。

しかし、彼らは一方的に我々から技術を奪い、投資を奪い、開放性を奪い、ウイルスを与え、嘘をつき、社会を分断しようとした。だから、我々は、広範なアプローチで調整していく必要がある。具体的には(1)中国から冨や技術を引き上げる(2)サプライチェーンを切り離す(3)自由主義諸国間での団結を強化する(4)台湾を守るため周辺国がサポートするなど。日本は台湾と肩を並べて歩む特別な関係にあることにも留意すべきである。

□ □ □

 
その後の質疑応答は限られた時間の中、多様な意見交換が行われた。

例えば、核の傘の信頼性が揺らぐ昨今、独自の核保有も議論すべきではないかとの問いには、核の選択は日本自身が決めるべき問題であるという回答であった。

あるいは、米国の台湾政策である戦略的曖昧性は、対中国という観点で弱腰との誤ったメッセージを送るのではないかとの意見に対し、予測不能なトランプ氏こそ抑止力を発揮するとのことであった。

(文責 国基研)
 

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トランプ政権幹部と忌憚のない意見交換

島田企画委員が解説。本日はトランプ政権幹部と意見交換をしました。アメリカ・ファースト研究所AFPIのフレッド・フライツ・元米国家安保会議首席補佐官とスティーブ・イエーツ・元副大統領次席補佐官が来所。次期大統領がトランプ氏になることを見越し、政策作りのため台湾訪問後に来日。日本の核政策や対中国問題に対し、忌憚のない意見交換ができました。予測不能なトランプ氏であれば対中抑止は現政権よりはるかに効果的といいます。