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2024.08.01 (木) 印刷する

総合安全保障プロジェクト 「尖閣諸島に最近接の中国海警局基地の強化」中川真紀国基研研究員

4月から開始した総合安全保障プロジェクト。その一環として、最近の中国海警局の動向を中川真紀研究員が台湾海峡における「潮目」という観点からブリーフィングしました。

早朝からの開催でしたが、国会議員をはじめ企画委員など多くの参加者がありました。

この総合安全保障プロジェクトの成果は、逐次、国基研チャンネルやホームページ上でも展開します。

【概要】
月例の中国軍事動向の定期報告。

今回はわが国の尖閣諸島に最も近接する中国海警総隊の基地がある東海海区の動向について、衛星写真などのオシント情報から分析し紹介する。

昨年11月29日、習近平国家主席は海警総隊東海海区指揮部を視察し、「海警部隊の整備・運用・特性等を把握し、海上権益保護法執行能力を向上させよ」と指示すると同時に、海警2個編隊をリモート視察した。東海海区の直属第1支隊と第2支隊は尖閣諸島を担当する支隊であり、日本に対する強い姿勢を内外に示した格好になる。

習氏がリモート視察した時の報道画像を分析すると、被視察部隊の画面上に東シナ海にある日中中間線上のガス田のリグが映っていた。つまり、海警総隊に尖閣諸島のみならずガス田の護衛任務が付与され、海上権益保護法執行を強化している実態を示した可能性がある。

さて、尖閣諸島に向かう東海海区の拠点の一つである浙江省玉環島の玉環基地を衛星写真で分析すると、着々と整備されていることが分かる。玉環島には海警基地の近傍に東部戦区海軍基地が所在し、そこでは桟橋が延長され、海軍艦艇のほかに5000トン級の海警船が接岸している様子も確認された。基地施設は他にも複数のヘリパッドが整備され、揚陸艦やRORO船に車両を積載する施設の整備も認められた。

他方、東海海区海警基地と推定される場所では、桟橋の整備が進み大型船の接岸が可能となっている。さらに臨検等を行う特殊作戦隊員を訓練する施設(武装障害走訓練場など)も整備され、特警部隊が駐屯している可能性がある。

7月11日の海警局報道官の談話によると、これまでは日本側漁船に対して「再発防止を促す」という表現を用いていたのだが、「対抗措置を執る権利を有する」という強い表現に変化したことにも留意したい。日本漁船への実力行使という可能性もあり、そうなればまさに「潮目」が変わることになり、大いに警戒すべきである。

今後とも、中国人民解放軍などの動きを、衛星画像などのオシント情報から分析し、逐次アップデートしていきたい。

資料PDF 中国海警総隊東海海区の動向

(文責 国基研)
 
 

関 連
国基研チャンネル

第553回 尖閣諸島を狙う 中国海警総隊東海海区の動向

わが国の尖閣諸島周辺海域で活動している中国海警船が所属する中国海警総隊東海海区は、玉環島にある基地の整備を進めている。また、隣接する海軍基地でも同様の整備が行なわれており、海軍の艦艇と調整・連携する可能性も。中国が2008年に初めて尖閣諸島周辺の領海に侵入して以降、着実に玉環島を尖閣、台湾に対応する拠点として整備してきた。国基研中川真紀研究員が、公開情報を基に分析します。

 

 

活動報告

総合安全保障プロジェクト 読売新聞と共同分析

2024.07.18