公益財団法人 国家基本問題研究所
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最近の活動

2025.09.10 (水) 印刷する

中国軍事動向月報 2025年8月

1 全 般
8月は、陸軍と民間RORO船の大規模な共同訓練が確認され、着上陸訓練の段階を上昇させている状況が認められた。また、着上陸作戦の際、RORO船と接続して使用できる桟橋船3隻が東部戦区玉環島海軍基地に停泊しているのが確認された。海上での接続試験が終了し、東部戦区に引き渡された可能性がある。

海軍では、中露共同演習「海上聯合-2025」と同演習に引き続き中露共同パトロールが実施された。また、露側の報道のみであるが、初の潜水艦共同パトロールの実施が公表された。露潜水艦は中国艦に比し静粛性が高いため音響情報収集能力が高い。今パトロールを機に中露軍事協力が海上・空中に加え海中にも拡大し、恒常的な情報共有の枠組みが整えられれば、第1列島線内の領域拒否を目指す中国の日米艦艇に対する情報収集・識別能力向上に資する可能性がある。

台湾周辺においては顕著な活動は確認されなかったが、東沙海域において7月に引き続き、3回の海警船の活動の他、16日の漁解禁を利用し、中国漁船と海警船が連携して台湾側の対応状況を偵察した可能性のある活動も確認され、禁漁期間にはいる来年5月までは漁船の活動を利用した中国海警の法執行活動などが活発化する可能性がある。

日本周辺では、尖閣諸島周辺において、16日の禁漁期間明け前後に尖閣北西方の接続水域外で1~2隻の増援と見られる海警船の活動が確認された。また、接続水域内でも常時4隻態勢を維持し、昨年に比し中国漁船に対する取締りを強化できる態勢をとった。悪化する中国経済や9月3日の重要な国家行事である中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会を前に、日本との緊張が高まるのを避けた可能性がある。

南シナ海においては、引き続きフィリピン(以下、比)への威圧を継続したが、スカボロー礁周辺で比巡視船に対応していた中国海軍と中国海警船が衝突する事案が発生した。死傷者が出ている可能性が大きいにも拘らず、中国側からは現時点では衝突については一切コメントが公表されていない。国家の重要行事前に、比にしてやられたとの印象を与える不祥事を国内に対して隠蔽しようとしている可能性がある。