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2026.06.17 (水) 印刷する

「イランと北朝鮮:トランプ政権の視点 」 フレッド・フライツ・元米国家安全保障会議首席補佐官

6月12日、第一次トランプ政権で国家安全保障会議の首席補佐官兼事務局長を務めたアメリカ第一政策研究所(AFPI)副所長のフレッド・フライツ氏が1年ぶりに来所した。

今回で通算3度目の来所となるフライツ氏は、最新刊“North Korea, Nuclear Brinkmanship, and the Oval Office(仮訳『北朝鮮、核の瀬戸際外交、そして米大統領執務室』)”(Texas A&M University Press, 2026)を携え、イラン攻撃や北朝鮮に対する政策決定の意味などを解説し、その後、幅広く意見交換を実施した。

【概要】
現在、トランプ政権は日本の高市政権ときわめて良好な関係にある。本年1月に上梓した高市政権とトランプ政権に関する著書で言及したとおり、両国が築きあげてきた良好な同盟関係は、対中関係において重要な抑止力となり、世界平和にも寄与するだろう。

以下、トランプ政権の政策で現在進行形のものを二つ紹介して議論の端緒にしたい。

・イランへの攻撃
イラン戦争が継続し、同時に停戦交渉も行っている。イランの核兵器については、攻撃を行わねばならない実質的証拠に基づき実行した。

今回の大規模作戦の前哨戦としてイラン核関連施設3か所に対するピンポイント攻撃(2025年6月21日)を行ったことは前回の来所時に言及したとおりで、トランプ政権は必要なら軍事力を投入することを躊躇わないと示した。イランによるウラン235の60%濃縮は平和目的のレベルを遙かに超え兵器目的でしかなかった。そのため米国は、イランの核開発計画の進展を明らかな脅威と認識したのである。

昨年の攻撃により核兵器製造能力は一時的に減少したものの、結局2020年から行ってきた核開発を断念することはなく、もはや交渉では解決しないと米政府は判断したのだろう。

イラン戦争を終了するときは、目的が達成されたとき、つまりイランによる核の脅威がなくなることを意味する。これまで米国の攻撃で核開発を10年は逆戻りさせたが、脅威は消滅していない。かりそめでない最終的・実質的な停戦を早期に期待するが、その時期は相手の出方次第ということもあり予想は難しい。

・北朝鮮の核問題
他方、イランの影に隠れて見落とされがちだが、北朝鮮の核開発は東アジアの安全保障にとって大きな脅威である。

かつて、クリントン政権時に米朝枠組み合意が成立(1994年)したが、W・ブッシュ政権時に決裂し、その後オバマ政権、バイデン政権など、対話重視と強硬策など政策が都度変遷したものの、実質的交渉に至ることはなく、その間に北朝鮮は核兵器開発を継続してきた(SIPRIの試算では核弾頭数はすでに約50発とされる)。

ロシアと北朝鮮の関係が緊密である事実は、ウクライナ戦争勃発で北朝鮮が軍隊を派遣し、人民の血をもってロシアを支援したことからも理解できる。また、北朝鮮軍はウクライナ戦に参戦することで現代戦の実戦経験を積み、強くなったと見るべきだ。決して過小評価してはならない。

他方、6月10日、日米両政府は拡大抑止協議(EDD)を行い、北朝鮮の核問題は解決済みというロシアの主張を否定し、完全な非核化へのコミットメントを再確認したことは評価できる。

安倍総理が築いたトランプ大統領との信頼関係は高市政権でより強固なものとなった。日米関係が強固であることは、対北朝鮮の文脈の中でも有効に機能するだろう。

【質疑応答】
Q:第1次トランプ政権で中国を「戦略的競争相手」と呼んだが、第2次トランプ政権で実施した米中首脳会談では「建設的な戦略的安定関係」へと変化させたが、その意図は何か。
A:競争相手(competitor)とはお互い同じルールを守ることを前提とする。しかし中国は国際ルールを守ってこなかった。だから競争者とはなりえないので表現を変えたのだろう。

Q:トランプ大統領はクアッド(日米豪印)に関心が低いように感じるが如何。
A:仮に興味を示してないように見えたら、現在トランプ政権はイランの問題を中心に発信しているから。クアッドはインド太平洋の安全保障にとって重要な枠組みでルビオ国務長官が支持していることも忘れてはならない。

Q:米国は国際法などのルールを軽視しているとの批判について伺いたい。
A:国際法を体現すべき国連安保理はすでに機能停止状態である。そのような中にあっても、米国は法を重視していることに変わりはない。例えばベネズエラに対する軍事行動は、西半球を重視する政策の行使であり、国内法の執行上は厳密な手続きに従っている。他の対外軍事行動においても、ルールに従う姿勢は一貫している。

Q:台湾に対する武器売却が遅れているようだが、トランプ政権は中国との関係で台湾政策を変えたのか。
A:これまで同様、台湾政策は変わっていない。重要な点は台湾が武力統一されないことであり、そのためには米国の圧力のみならず、強固な日米関係を示し続けることである。

【略歴】
アメリカ第一政策研究所(AFPI)アメリカ安全保障センター副所長。2018年にドナルド・トランプ大統領副補佐官兼国家安全保障会議首席補佐官を務めた。CIA、DIA、国務省、下院情報委員会スタッフとして25年間、米国の国家安全保障に携わる。共編著に“An America First Approach to U.S. National Security”(America First Press, 2024)、『トランプ・高市同盟で日米は繁栄する 第二次トランプ政権の新世界構想』(PHP新書、2026)、“North Korea, Nuclear Brinkmanship, and the Oval Office”(Texas A&M University Press, 2026)など。  (文責 国基研)