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2026.07.03 (金) 印刷する

シンポジウム『日本を強く豊かに』 第二部 「2027年、日本の安全保障上の課題! このままでいいのか日本!」

第二部は、「2027年、日本の安全保障上の課題!このままでいいのか日本!」と題し、鈴木英敬自民党政調会長特別補佐による基調講演に続き、鈴木議員に加え吉田正紀双日米国副社長・元防衛大臣政策参与、岩田清文元陸上幕僚長・国基研副理事長、村野将ハドソン研究所上席研究員によるパネルディスカッションを、櫻井よしこ国基研理事長の司会で進行した。

以下、第二部の講演概要を掲載する。

【概要】
第二部
「2027年、日本の安全保障上の課題!このままでいいのか日本!」

●基調講演:鈴木英敬・自民党政調会長特別補佐

近年、安全保障の領域において特筆すべきパラダイムシフトが起きている。それは、新たな戦い方の出現である。第一がAI戦争、そして第二がドローン戦争の本格化である。

・AIとドローンが変える現代戦のリアル
まさに今AI戦争の時代が幕を開けた。2月28日以降に起きたイランへの攻撃は、戦争の意思決定の構造そのものを根底から覆した。アンソロピック社のAI「CLAUDE」や、パランティア社の「GOTHAM」といった最先端データ分析プラットフォームが実戦利用され、作戦開始から標的補足、最終的な戦果判定にいたるプロセスが、わずか11分23秒で完了したのである。

人類史上初めて、AIが高度な意思決定の根幹を担い、軍事作戦を主導した。その間に人間が介在する余地はわずかであった。ただし、戦場データの統合・可視化が飛躍的に進む一方、不適切なデータによるAIの誤判断や間違ったターゲッティングによる重大な人的被害の発生という深刻なリスクを内包している点には、常に留意する必要がある。

このAIの活用と並行して爆発的に拡大しているのがドローン戦争である。イランは小型から大型まで複数のドローン「シャヘド」を組み合わせ、商船や周辺国への攻撃を繰り返した。これに対し米国は、シャヘドをモデルに開発した低コスト自爆攻撃ドローン「LUCAS」を実戦投入し、今後100万機規模のドローン調達を目指すとされている。

・「意思決定の優越」が戦争の帰趨を決する

このようなAI時代の戦場においては、戦闘スピードが飛躍的に上昇し、情報量が爆発的に増加する。そのため、意思決定の高速化とマルチドメインの情報統合は必要不可欠になる。米国では、陸・海・空・宇宙・サイバーの全領域をシームレスに統合するJADC2(統合全領域指揮統制:Joint All-Domain Command and Control)構想のもと、指揮系統能力の向上が進められている。我が国の自衛隊においても、米国の動向などを情報収集して指揮系統能力の不断の検討を推進すべきである。相手よりも正確かつ迅速な意思決定、すなわち「意思決定の優越」を確保することが、現代戦において主導権を掌握する道である。

・防衛産業基盤をデュアルユースで強化せよ
かねてより指摘されてきたことだが、わが国の防衛産業は、国内かつ防衛装備専用の限定的な生産・技術基盤にとどまっていた。防衛省(自衛隊)による国内調達のみに依存せざるを得ず、市場としてきわめて矮小化されていた。

この基盤を抜本的に強化するためには、民生技術と防衛技術の相互利用を促すデュアルユースの推進、スタートアップなど非伝統的防衛プレイヤーの新規参集、同志国との防衛産業協力の推進などの発想の転換を行い、防衛産業の領域を拡大していくことが不可欠である。具体的には、調達制度の見直し、産業支援、防衛装備移転の拡大、サプライチェーンの強靱化、推進体制の整備という5つの改革を提唱したい。また、防衛産業エコシステムの構築に向け、防衛産業基盤強化法を全面的に改正するとともに、防衛・経産副大臣の連携体制を構築し、防衛省と経産省が協力して、産業基盤強化を図ることが重要である。

 
 

●パネルディスカッション:
鈴木英敬議員による基調講演の後、登壇者の吉田氏、岩田氏、村野氏がそれぞれの視点から発言し、この日の討論の口火を切った。

1 吉田正紀・Salon de Sojitz主宰・元海将
「米国から観た日本の安保・外交政策の現状と未来―プランAを追求しつつ、プランBにも備える―」

2026年の「ミュンヘン安全保障会議報告書」は、現在の世界情勢を、建物を粉砕する巨大な鉄球になぞらえて「破壊球政治(wrecking-ball politics)」の時代に入ったと表現した。すなわち1945年以降、米国主導で築かれてきた国際秩序(ギリシア神話で天球を支える巨神アトラスのように米国が支えてきた世界秩序)は次々と破壊され、いま壊滅の危機に瀕している。このような大転換期に米国の同盟国は、地域の平和と自国の安全を維持するために、米国との協調を維持しつつも、自らの力で備えなければならない局面に立たされている。

米国の戦略家ハル・ブランズ氏とマイケル・ベックリー氏の著書『Danger Zone – The Coming Conflict with China』が示すように、いまの米中対立は「100年マラソン」のような長期戦ではなく、10年間の猛烈な短距離走と捉えるべきである。その中でハル・ブランズ氏は日本を、強固な中堅超大国(Strong-Middle Superpower)になりつつあると位置づけ、インド太平洋の安全保障にとって着実に価値を高めていると観ている。

こうした状況の中、わが国が備えるべきは、二つのアプローチである。米国をアジア地域に根付かせるリンチピンとしての努力を惜しまない「プランA」と、仮に米国が不関与や撤退を選択した場合に備える「プランB」である。これらは二者択一ではなく、プランAを突き詰めた延長線上にプランBの基盤が形成される。したがってわが国は、これら両者を同時に、かつ戦略的に追求していく必要がある。

他方、さる6月17日、政権与党(自民党と日本維新の会)が安保3文書の改定提言を決定した。しかし報道によると、維新が提起した非核3原則見直しや原潜導入といった踏み込んだ提案に対し、自民党は消極的であるとされる。今後わが国は、従来のプランA(同盟維持)だけに安住するのでなく、プランB(自立)も視野に、あらゆる自己規制やタブーを排して検討を深化させていかなければならない。

 

2 岩田清文・国基研副理事長・元陸上幕僚長
「日本が再び核攻撃を受けないために何をすべきか!」

戦後レジームからの脱却は、憲法改正と核というタブーからの脱却を意味する。

唯一の被爆国であるわが国が、核の脅威に晒されないための方策は、究極の目標である核廃絶に向けた核軍縮・軍備管理、及び我が国に核攻撃をさせないための核抑止である。しかし現実は、中国が年間100発、北朝鮮が20発の核弾頭を製造し続け、加えて中国は米国とロシアとの3国間核軍縮協議を拒否している。つまり軍縮・軍備管理は実質機能していないのが実状だ。

特に中国は、核弾頭の他、その投射手段であるミサイルも数的・能力的に拡充している。米国にまで到達するICBM(DF-31)の実射演習を行い、中国北西部に発射基地となる地下サイロ群を建設し、これまでに320基が確認された。このように中国は核の大軍拡を継続している。

わが国にとって直接の脅威となるのは、小型の低出力核兵器である。米国防総省の年次報告書(2025年12月)によると、中国は10キロトン未満の核兵器を開発しており、運搬手段のDF-26中距離弾道ミサイルやH-6N爆撃機に搭載するALBM(空中発射弾道ミサイル)は、既に実戦配備されているという。したがって、もはや軍縮・軍備管理が機能しない以上、わが国は核抑止を真剣に考えなければならない。被爆国である日本は、二度と核攻撃を受けないためにも、なおさら真剣になるべきであるが、日本の政治もメディアも核の議論を遠ざけようとしている現実は問題である。

米国のシンクタンクであるRAND研究所(2025年)及び米国防総省(2024年)の報告書は、仮に台湾侵攻が失敗するような場合、あるいは限定的な核使用により戦争を早期に終結させるため、中国が小型核を使用して起死回生を狙う可能性があると指摘している。この小型核使用に関しては、ロシア軍が2022年、戦術核兵器をウクライナ軍に対し使用することを検討し、これを米国が抑止した事実がある。小型の戦術核を使用する敷居は下がっている現実を我々は注視すべきである。

この状況を踏まえ、米国は、小型核攻撃抑止のための海上発射型核巡航ミサイル(SLCM-N)の開発を進めており、2032年9月の限定運用開始を目指している。我が国に対する核抑止力提供を意味するこのSLCM-Nは、運用上横須賀港等への持ち込みが想定される。

このため、2032年以前の早期に、非核三原則の見直しも含めた議論を進める必要性を、国基研とし今年4月に提言をしたが、日本維新の会以外は、この対応が見られない状況である。核抑止に関する政治の、より真剣な受け止めを改めて強調したい。高市政権の英断に期待する。

 

3 村野将・ハドソン研究所上席研究員
「台湾有事における核使用シナリオとその課題」

私からは、台湾有事における具体的な核使用シナリオを検討してみたい。

核戦略の専門家の間では、(細部の違いはあるものの)核武装した現状変更国は概ね共通した「勝利の方程式(Theory of Victory)」を持っているものと考えられている。すなわち、核使用の脅しや実際の使用を通じて、米国の介入を抑止したり、相手の抵抗意思を挫くことで、早期の既成事実化を達成してしまおうというものである。この場合、我々はグレーゾーンの状況であれ、通常戦争の最中であれ、「いずれかの段階で核を使用してくるのではないか」という疑念の中での対応を強いられることになる。この状況を「核の影(Nuclear Shadow)」と呼ぶ。すなわち、我々としての課題は、第一に、「核の影」の下で、グレーゾーンや通常戦争の発生を抑止すること。第二に、仮に抑止が失敗して戦争となった場合、核エスカレーションを防ぎながら、いかに自国に有利な形で紛争を終結させるかが問われることになる。

こうした状況下で考えうる核使用の様相は、相手の抵抗意思を挫きつつも、さらなるカウンター・エスカレーションを阻止しうる規模・方法をとることになろうから、我々が第一義的に懸念すべきは限定核使用シナリオであり、いきなり都市部が核攻撃されるような戦略核抑止の信頼性が問われるシナリオではない。また、政治指導者が核使用を検討するタイミングは、通常戦力レベルでの劣勢を挽回する時か、あるいは決定的敗北を回避する時になるはずだ。西太平洋地域における通常戦力バランスを考えた場合、すでに中国が一定の優位を築きつつあること、さらに対イラン作戦などで米国が通常戦力を消耗して一層余力がなくなっていることを踏まえると、「核使用か、敗北か」の選択を強いられるのは、むしろ米国側かもしれない。

ここで、台湾有事における核兵器に期待される具体的役割を、政治的役割と軍事的役割に整理して考えてみたい。

政治的役割とは、具体的な目標に対して核兵器を使用するのではなく、使用を仄めかすことによって自国に有利な状況を形成しようとする際の効果である。その点、中国の核には、日米の介入を抑止し、米国の核威嚇を相殺して自らへの核使用を抑止する役割が期待されていよう。その脅しの信ぴょう性を高めるため、中国は先行不使用政策を変更したり、核搭載可能アセットの運用を活発化させるかもしれない。他方、米国にとっては、中国の核威嚇を相殺し、通常戦力の劣勢時に侵攻を阻止し、同盟国へ安心感を提供(安心供与)することである。このように米国の果たすべき政治的役割は中国よりも多様である。

軍事的役割とは、具体的な軍事目標を達成するために実際に核兵器を限定的に使用することによってもたらされる役割である。中国にとっては、水陸両用部隊の損耗で台湾攻略作戦が頓挫しそうになった場合などに決定的敗北を回避すること、米国の先行核使用に報復すること、あるいは軍事的優位を確保することである。一方で米国にとっては、中国の先行核使用に報復すること、通常戦力が不足する中で、核使用により中国の水陸両用部隊を撃滅すること、あるいは軍事的優位を確保することなどが考えられる。

 
●全体討論時の主な質疑
司会: 核の使用だが、ウクライナ戦争では実行に移されなかったが、仮に台湾侵攻という場合、限定的とはいえ核攻撃は現実的な手段なのか。
村野氏: 米国の場合、限定的であっても使用のハードルは高い。一般論として政治的ハードルが高いこともさることながら、対艦攻撃(洋上移動目標攻撃)に最適化された核戦力を持っていないという能力的な制約もある。それ以外のオプションとしては、着上陸が開始された場合に戦力集中地点に限定して攻撃することは議論の俎上に上がっている。他方中国は、米国の出撃拠点である航空基地や港湾が所在するグアムや在日米軍基地などを目標にする可能性がある。しかし、軍事目標に対する直接攻撃よりも先に、大気圏内核実験などと称して、洋上に向けて核ミサイルを発射し、デモンストレーション的な核爆発を見せつけるといった可能性の方が高いと思われる。

司会:これから日本国を守るために具体的に何が必要か。2度と核攻撃を受けないために今できることは何か。
村野氏: 米国は日本の防衛力強化を全面的に歓迎している。例えば、自衛隊が米軍の戦略爆撃機に対して空中給油を行う訓練を実施するといった形で、日本の通常戦力で米国の核抑止力をサポートすることなど、拡大抑止に関する協力を政策レベルの協議から運用レベルの連携に引き上げていくこともできる。

最後に司会の櫻井理事長は、この国際秩序の大変化は戦後レジームを振り払う好機と捉え、今すぐ行動することが必要であると力強く宣言し、この拡大月例研究会を終了した。
(文責 国基研)

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