公益財団法人 国家基本問題研究所
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2026.07.03 (金) 印刷する

総合安全保障プロジェクト 月次報告会

6月の総合安全保障プロジェクト月次報告会は、まず吉田正紀・元防衛大臣政策参与が「米国から観た日本の安保・外交政策の現状と未来」を、続いて岩田清文・国基研副理事長・元陸上幕僚長が「核の脅威の現状と将来予測」を、最後に中川真紀・国基研研究員が「中国軍着上陸訓練の状況」について、それぞれ報告した。

第一部は国会議員に向け、第二部は主要メディアに向け報告し、参加した議員、記者、企画委員らの質疑に応じた。以下、その概要を簡単に紹介する。

【月次報告】
第一部(午前8時~9時)、第二部(午前11時30分~午後1時)

●『米国から観た日本の安保・外交政策の現状と未来―プランAを追求しつつ、プランBにも備える―』吉田正紀・元防衛大臣政策参与・米国双日副社長
注:報告概要については、3日前に実施した月例研究会拡大版の中で報告した内容とほぼ同様であり、重複を避けるため、以下のURLを参照されたい。

報告概要はこちら

●『核の脅威の現状と将来予測―戦略3文書改訂対象となる2035年を見通して―』岩田清文・国基研副理事長・元陸上幕僚長
注:報告概要については、3日前に実施した月例研究会拡大版の中で「日本が再び核攻撃を受けないために何をすべきか!」と題して報告した内容とほぼ同様のため、以下のURLを参照されたい。

報告概要はこちら

 

●『中国軍の着上陸訓練の状況』中川真紀・国基研研究員
中国軍は着上陸訓練を活発化させている。仮に台湾侵攻を行う場合、着上陸作戦は核抑止、接近阻止、領域拒否、航空・海上優勢獲得などにより、着上陸が可能となる環境を整えた上で、最終的な作戦としての位置づけにあることを確認しておく。

着上陸訓練の年間サイクルは、他の訓練と同様に、年初の各個訓練(機材取り扱いなど)から始まる。3月頃から沿岸の着上陸訓練場に移動し、浮航操縦訓練(水陸両用車の水上航走訓練)を行い、その後、小隊、中隊、大隊、旅団規模へと順次訓練の規模を拡大していく。さらに、海軍との協同訓練や戦区をまたぐ統合着上陸訓練へと発展させ、年末には訓練検閲を実施するのが一連の流れである。

中国軍の主な着上陸訓練場は、東部戦区では浙江省の象山、福建省の東山島、福建省と広東省の境界にある大埕湾、南部戦区では広東省の汕頭、汕尾、海南島の東披などに位置している。

・着上陸訓練の流れ
まず基本的な浮航訓練について、象山における状況を衛星写真で確認すると、水陸両用車4両を1個小隊として縦隊を組んで水上を航走させていることが分かる。年度当初は、こうした小部隊の浮航訓練から開始される。

東山島では、海軍との共同訓練が確認できる。海上から海岸にかけて、少なくとも水陸両用車24両と戦車揚陸艦(ユーティンⅡ級)が確認できることから、大隊規模の陸海協同訓練が行われているとみられる。

浮航操縦に習熟した後は、揚陸艦からの着水、浮航、海岸への上陸にいたる訓練に移行する。加えて大埕湾では、海岸から内陸に向け対上陸障害が設置されていることが確認された。着上陸訓練の最終段階として、海岸に到達した後の障害処理や着上陸戦闘の訓練を行うことが想定されている。

また、訓練の様子を伝える報道からは、まず突撃舟艇部隊が上陸して先遣隊が突撃し、その後水陸両用部隊が上陸するという様子が伺える。また、着上陸部隊が各車両や班単位でUAV(無人航空機)などの無人装備を運用している様子も報道されている。着上陸作戦における「無人+有人」の連携戦術を研究・訓練している模様である。

・着上陸訓練場の状況
台湾本島における上陸適地は「紅色海岸(レッドビーチ)」と呼ばれ、水陸両用車が接岸・達着できる砂浜があり、かつ港湾や飛行場にも近い場所を指す。具体的には、北から時計回りに海湖、金山、宜蘭、荘園、花蓮、知本、喜樹、甲南など数か所が適地として挙げられる。

2024年に実施された台湾の「漢光40号」演習では、上陸想定地点として海湖海岸(全長4.4Km)、甲南海岸(5.3Km)、喜樹海岸(4.4Km)が設定された。

実際、中国軍の着上陸訓練場である東山島は海岸長(正面幅)が4.2Kmであり、台湾と類似の地形での実射を含む着上陸訓練を実施している。しかし、地形的に縦深(奥行き)が不足していることが難点といえる。また、汕尾でも海岸長は3.9Kmと1.1Kmで幅は十分足りるが、こちらもやはり縦深が不足している。したがって、海岸に上陸するまでの訓練はできても、連続して海岸堡(上陸地点の陣地)設営までの訓練は困難と考える。

・進化する着上陸訓練
他方、2024年以降に新設された海南島の東披着上陸訓練場は、正面幅が6Km、縦深が5Kmにおよび、海岸には水際障害が設置され、さらに模擬市街地区も保有している。したがって、ここでは、海岸への達着から市街地を制圧しながら前進する縦深戦闘の訓練が可能である。

以上のように、最近の中国軍は、隣接部隊や後続部隊との連携までカバーできる大規模な着上陸訓練場を整備して、より実相に近い訓練を実施することにより、侵攻準備を着実に完成させていくものと見積もられる。

 
報告会では、参加した議員あるいは記者からの質問に答える形で補足説明が行われ、活気ある議論が展開された。質疑応答の一部を以下に紹介する。
【質疑応答】
Q: 戦略思想家ハル・ブランズ氏の理論でプランA(日米同盟を強化)とプランB(米軍撤退の場合)で、日本維新の会が提言する原潜の保有はプランBになりうるか。
A: ワシントンに直接影響を及ぼさない小型戦術核による威嚇の場合、プランAでは抑止が機能しないことが懸念される。そのような場合にはプランBになる可能性はあるのではないか。いずれにしても、原潜計画を進めるにしても一定の時間を要するなど、時間軸を考慮しなければならないことは重要な視点である。さらに現場感覚では、自衛隊側に大きな負担を強いることになる。しかし、最終的には政治が決断することであるので、そのためには一切のタブーを排して開かれた議論が必要である。

Q: タブーを排して議論するという前提で、仮にわが国が核弾頭を保有する場合、具体的な構想はあるか。
A: 議論の俎上に載せるという意味で、潜水艦搭載型の核共有が一つのイメージである。すなわち、核の運用は米国が、潜水艦の運用は海自が行うというパターンもありうるのではないだろうか。

Q: 米国が提供する拡大抑止に対し、わが国がその信頼性を疑うような過敏な反応をすると、逆に対外的に拡大抑止の信頼性を更に弱めることになるのではないか。
A: そのためのプランAとプランBなのだが、ご質問のような懸念を含めて議論をしていかなければならない。

Q: 台湾側は中国の着上陸作戦に対してどのような準備をしているか。
A: 台湾が行う軍事演習「漢光演習」の中では、着上陸阻止のための海岸への障害設置、内陸の路上への障害設置などをしてきたが、最近の演習では内陸部でも予備役動員訓練をするなど、より実相に近い訓練に発展させている。

Q: 中国の水陸両用戦部隊にはどのような用途があるか。
A: 人民解放軍の両用戦部隊は、集団軍の水陸両用部隊と海軍陸戦隊とに分類される。集団軍の場合、東部戦区と南部戦区に水陸両用旅団があり、台湾侵攻時に地上侵攻部隊として海岸堡確保が任務であり、大規模な投入が想定される。一方、海軍陸戦隊6個旅団は、台湾総統府や花蓮など重要目標に対しピンポイントで攻撃を加えるという点で、用途に違いがあらわれる。

この総合安全保障プロジェクトの月次報告会・記者向け報告会は、月末開催を基準に定期的に実施していく予定である。 (文責 国基研)