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2012.07.05 (木) 印刷する

「憲法改正の基本姿勢」 小田村四郎 元拓殖大学総長

 小田村四郎・元拓殖大学総長は6月29日、国家基本問題研究所で、憲法をテーマに語り、同研究所企画委員と憲法前文、天皇、元首、二院制、改正など多岐にわたって意見交換した。
 この中で小田村氏は、現在の日本憲法が「日本を縛り付ける道具」となっていると指摘、評価できるのは帝国憲法時代、各大臣と同格であった首相の権限が強化され、「首相に任命権を与えたのが唯一の取り柄である」と述べた。
 小田村氏は大蔵省出身で、1995年から8年間、行政管理庁事務次官を務めている。曾祖母の兄は、吉田松陰で、現在89歳。憲法の基本問題について幅広く語った。憲法改正については、この春、たちあがれ日本、自由民主党、みんなの党の3党が改正草案を発表しており、これに対する評価、批判を文書でも提出した。同氏は、各党が憲法改正を現実の課題として取り上げ、第一歩を踏み出したことは喜ばしいが、なお多くの問題点があると述べた。このほか、同氏は次のように語った。

一院制はポピュリズムの惧れ

  1. 憲法は必ずその国の歴史、文化に根ざしたものでなければならない。しかし、現憲法は、日本の歴史や文化に対し無知な、占領軍のスタッフ22人が「日本を徹底的に弱体化するのを目的」に起草した。一刻も早く占領遺制の残滓を一掃してほしい。
  2. 自主憲法を起草する場合、文語体使用は難しいかもしれないが、少なくとも文語調の簡潔な表現が必要である。
  3. 国家には必ずこれを代表する特定の個人が存在する。これを元首という。現憲法ではそのことが曖昧で、3党が天皇を元首と明記したことは当然である。
  4. 国民主権の用語ほど国民思想を混乱させたものはない。もともと主権とは国家の属性で独立性を意味し、最高、絶対、無制限などの性質を付与されてきた。しかし、このような概念は国際関係のものであって、これを内政に使用するときは独裁政治の根拠ともなりうる。いかようにも解釈される、かかる多義的な概念を憲法上使用してはならない。
  5. 一院制は、首相公選制と並んでポピュリズムあるいは独裁的権力組織となる惧れがある。それ故に、議院内閣制の下では二院制を持続した方が良い。ただし、参議院の構成は公選議員に限らず、職能、地域、学識経験者等によることも検討したい。
(文責 国基研)