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2012.07.10 (火) 印刷する

「憲法改正に4つの論点」 田久保忠衛 国基研副理事長

 田久保忠衛・国家基本問題研究所副理事長は7月6日、同研究所企画委員会で、憲法改正問題について講師として語り、「現行憲法がいかに屈辱的な憲法であるか。その上に立って憲法改正を考えていきたい」と述べ、四つの主な論点を明示した。
 国基研は憲法問題を今後取り組んでいく大きなテーマとして設定、勉強会を相次いで開いている。6月29日には小田村四郎・元拓殖大学総長を初回のゲストに招き、「憲法改正の基本精神」について話を聞いた。

改憲は国民全員の責任
 田久保副理事長は産経新聞新憲法起草委員会委員長も務めている。副理事長は、屈辱的な憲法との認識がスターティングポイントとして議論を始める第一の論点に続き、第二の論点は「憲法改正には今までに3回大きなチャンスがあったが、みんな見逃してしまった。先の戦争に行け行けドンドンと言ったのは国民であり、日本人全員の責任である。憲法改正ができないのも、我々全員の責任である」と述べた。第三の論点は、改正については、まず国の形をどうするか、そして前文、憲法9条、緊急事態条項の四つであるとした。最後の論点として、改正運動のあるべきキャッチフレーズをどうすべきか、との考えを明らかにした。
 また、田久保副理事長は、そもそも現憲法が占領中に作られたものであり、日本が独立した際(1951年のサンフランシスコ講和条約調印、翌年発効)、なぜ破棄しなかったのかと基本的な疑問を示し、「憤激しない方がおかしい」と語った。しかし、その後も憲法改正には二回のチャンスがあった。その一つは、79年12月のソ連のアフガン侵攻である。ソ連に対抗するためアメリカだけでなく隣国中国でさえ日本の防衛力強化を求めてきた。何故その時「やむを得ず軍事費を増やします。そのためには憲法を改正しなければいけません」と言えなかったのか?「大きなチャンスを逸した」という副理事長。
 二回目のチャンスは1990年から91年にかけての湾岸戦争時だ。アメリカの求めに応じて積極的な協力をすべきだった。外的要因を利用して憲法を改正できたのに、時の海部首相にはそういう能力も、意欲もなかった、と副理事長は残念がった。

日本国の誇りは皇室の存在
 第三の論点のうち「国の形」に関連して、副理事長は、日本が誇るべきものは何かと考えると、「皇室の存在」である、と明言。日本の天皇は西洋の王や中国の皇帝と違い、人民を征服したのではなく、人民のために祈りを捧げた、天照大御神以来の伝統である。国民の平和、安寧を祈ってきた2000年の歴史がある。歴史、文化、伝統を考えずに戦後60年の歴史だけで皇室がどうのこうのという評価は、間違っている、と強調した。権力とは別の所にあり続けた象徴としての天皇を憲法に位置づけたのは正しいことである。こうした点を日本の誇りとすべきではないか、と田久保副理事長は語った。
 憲法9条については、改正して国軍を創設、また、国民の災害からの被害を防ぐためにも緊急事態条項を挿入する。リベラルであろうがなかろうが、改憲にならざるを得ない、と田久保副理事長はいう。最後に運動のキャッチフレーズだが、改憲はタカ派ではない、国の運営に責任をもつのが改憲である、という展開を広げていかないと、成功は難しい。キャッチフレーズを考え、ブレークスルーを見出したい、と副理事長は締めくくった。

(文責 国基研)