チベット亡命政府のデキ・チョヤン外相は7月6日、滞在中の都内のホテルで、国家基本問題研究所の企画委員会メンバーと懇談会を開き、昨年8月の政教分離に伴って誕生したロブサン・センゲ政権の最優先課題の一つは「チベット支援の国際的なネットワーク、少なくともアジア支援網を強化する」ことであると語った。
二国間では動かない、中国
チョヤン外相によると、過去50年間にわたり多くの国がチベット問題を中国との二国間協議でとりあげるべきであると勧めてくれたが、実効があがっていない。「一対一では動かない。環境や人権などの問題に対し、少なくともアジア諸国の地域的な対処が必要だ」と外相は強調した。中国は南シナ海の領海紛争などでも国際的な協議を嫌い、たえず二国間処理を主張している。
チョヤン外相は7月6日のダライ・ラマ法王14世の77歳の誕生を祝う行事参加のため台湾、韓国、日本を訪れた。閣僚が分担して北米、欧州でも同様の誕生パーティを主催した。同外相は櫻井よしこ理事長ら国基研メンバーとの懇親会の前に、安倍元首相ら自民、民主両党の議員12人と昼食を共にした。
地域的な取り組みの必要性に関連して、チョヤン外相は、チベット高原はアジア10大河川の源流となっており、中国政府のチベット遊牧民移住政策やダム建設などのために水源の枯渇が問題化している、と述べた。政府が行っている牧草地の管理政策がずさんな人災であり、河川の沿岸国共通の対処が必要となっている。
日本を見守るアジア諸国
このほか、チョヤン外相は 1)中国政府の言語、教育、宗教政策などに抗議して自治区ではこれまでに41人が焼身自殺を図っている。中国政府がどんな説明を行おうと、チベット政策が根本的に間違っている証である 2)日本はアジアのリーダーであり、日本がチベット問題にどう対処するかを他のアジア諸国は見守っている 3)台湾では、民進党と国民党では対応に違いがあるが、議会メンバーにチベット問題を説明する機会を得た。韓国ではこれまで何もなかったが、一人の僧侶がやっとチベットハウスを立ち上げてくれた、などと述べた。
チョヤン外相は、1959年、東チベット(青海、甘粛省)から両親がインドに亡命した亡命第二世代で、7歳の時、カナダに移住した。カナダ、アメリカで教育を受け、亡命政府作りに参加するまでカナダの大企業の幹部を務めていた。チベット語のほか英、仏、中国、ヒンディー語を駆使する。