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2014.03.20 (木) 印刷する

「倍返し」と「積極的平和主義」への転換を 湯浅博(産経新聞特別記者)

 中韓による対日「歴史カード」の乱用は、はじめから敗戦国の日本を抑える狙いがあってアンフェアなものなのである。論争の発射台が、日本は最初から不利な状態におかれて「そこになおれ」と一発かまされて始まる。したがって、日本は専守防衛にならざるを得ず、殴られたら殴り返すか、あるいは恭順の意を示して泣き寝入りするかの困難な選択を迫られる。
 従来はひたすら恭順の意を示し、恥も外聞もなく嵐が過ぎるのを待った。現政権はそこに譲れぬ尖閣領有権がからんで、はじき返す手立てをあれこれ考えてきた。その典型例が首相の靖国参拝に対する中国による「軍国主義の亡霊が復活」との宣伝戦であろう。英紙の日中両大使による論戦寄稿はご存じの通り。 これには後日談があって、500通からなる読者コメントの大半が「古い軍国主義よりチベットと天安門の虐殺を語れ」との中国批判だった。過去の軍国主義よりも、現役の中華帝国主義の方が怖いのだ。ピンチをチャンスに変えた事例である。
 もっとも、日本には「内なる敵」がいて、ある大学教授は米紙ニューヨーク・タイムズなど意図的に左派系新聞を並べて「首相参拝に厳しい」と書いていた。が、米紙ウォールストリート・ジャーナルやインドネシアのコンパス紙は日本に同情的だったし、香港紙の明報は「日本の平和指数は中国より高い」と学者に書かせていた。両論あるのが実態なのである。結論をいえば、殴られたら「倍返しするぞ」との意思を示すことが抑止には大事であろう。「専守防衛」から「積極平和主義」に転換が賢い選択だと考える。ただ一点だけ、靖国参拝に比べると、慰安婦問題を対外発信するのはより難しい。