公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2014.05.09 (金) 印刷する

韓国の反日について 鄭大均 (首都大学東京特任教授)

 韓国の反日について三つの視点を記しておきたい。

 第一に、韓国の反日に見られる文化的優越性や歴史的被害者性の感覚は、学校教育以前に始まる自国びいきや日本批判に始まり、学校での歴史教育やテレビドラマとの出会いを通して、あるいは年中行事や反日行事への参加や報道を通して内面化されるが、それは日本に対する偏見やステレオタイプを含むものである。つまり日本の加害者性を語る韓国の教育やメディアは日本人が韓国人と同じ人間であるという共通意識をもたせる努力を怠っている。韓国の反日が外部からの批判に値するのはなによりもこの点においてである。

 第二に、韓国の反日は八〇年代以後の日韓の相互交流や相互浸透の過程で活性化している。日本人による加害史の発掘・暴露が韓国の反日主義者に資料や視点を提供するという状況がそれで、ここにはあるタイプの日本の知識人が韓国の反日に連帯し、その道徳性と韓国理解の深さを韓国人から称賛されるがゆえに、自分が友好や理解と考えてきたものが、実は韓国人の日本に対する偏見やステレオタイプを助長しているに過ぎないのだということに気がつきにくい状況がある。日本人が戦うべきはまずは彼らに対してであろう。

 第三に、反日の内面化にもかかわらず、韓国人にはそれに矛盾する感情や思考がある。分りやすいのは、世論調査が韓国人の反日感情の増大を示すのに、日本への韓国人観光客の数はむしろ増加するという近年の例であろうか。世論調査に答えるときには公的アイデンティティに沿って行動するが、旅行者になるときにはもはや歴史道徳的規範のことは忘れてふるまう。この矛盾は注目に値する。なぜなら、それは韓国の反日の根本的な変化の可能性を示唆するからである。もう一つ。反日は韓国人を自己反省や自己責任の感覚から遠ざけ、自身の良い国を作る動機を減退させてしまう。韓国人がそのことに気づくのは国内に大きな事故や不祥事が生じたときであり、ここにも反日が再考される契機はあるのである。