公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2014.05.12 (月) 印刷する

世界は悪意に満ちていることを知る 久保田るり子(産経新聞編集委員)

 世界の政治宣伝は悪意に満ちているのだ。
 習近平氏は3月28日のベルリン講演で「(南京事件で日本は)30万人の中国人を殺害する凶悪な罪を犯した」といい、「日本の軍国主義で中国人3500万人の死傷者が犠牲になった」と述べた。菅義偉官房長官は「極めて遺憾」を表明したが、対応としては不十分と言わざるを得ない。南京大虐殺記念館を平気で訪問してきた元首相たち(鳩山由起夫氏、村山冨一氏)らの猛省を促したい。
 さかのぼって慰安婦問題をみれば、「性奴隷(セックス・スレーブ)」の名のもとに戦争犯罪に拡大した1996年の国連人権委でのクマラスワミ報告書のとき、日本政府は反論さえ行なわなかった。答弁権を使えば反論することは出来たにも拘わらず、行なわなかった。「やっていたら(日本が悪者になって)大変なことになっていた」という日本の外交官の恐ろしく消極的な認識のためだ。戦うことを放棄し、最初から白旗である。
 以上の2例が示すように、日本は歴史問題を外交と考えてこなかったのだ。だから事実関係さえ争わず、まして政治宣伝に勝てるわけがない。日本は歴史問題を謝罪・補償の対象とのみ捉えていたのではないか。自虐史観の自縛による守勢と、「政府が前面に出ることは先進民主国として国際社会の共感を得られない」との呆れるべきエリート意識だ。
 情報戦に勝つ王道はない。まずはあらゆる手段で誤りを正す。その上で日本が誇る平和主義と人道の価値観を強く発信することだ。そのためには「悪意を打ちのめす」ことを明確に目的化した官民一体のシンクタンクが必要である。