民主党の岡田克也代表の集団的自衛権に関する立場が外相時代と「百八十度変わった」とした櫻井よしこ氏のテレビ発言(9月27日、NHK日曜討論)に対し、民主党が訂正と謝罪を求めているという。
確かに、そもそも無定見な人物、すなわち軸が定まらない人物について、何度変わったなどと議論できないという点ではその通りだ。
月刊『正論』2010年3月号掲載の論文で、西村眞悟氏が、平成6(1994)年の新進党結成時、「集団的自衛権行使容認を基本政策に入れるべし」という自身の主張が葬られた経緯を記している。一部引いておこう。文中、「今や外務大臣をしている人物」とあるのは岡田氏である。
《(自民党を離党した小沢一郎氏らの)新生党が積極的反対の中心になった。これは、意外だった。今や外務大臣をしている人物が、会議が終わったときに、得意げに「集団的自衛権を否定していただいて感謝します」と述べたのには正直憤然たる思いになった。》
180度プラス180度で360度変わったと櫻井氏は言うべきだったのかも知れない。いや、酩酊者が一回転したように見えたとしても、それはふらつきの連続に過ぎない。まず民主党幹部に必要なのは、意識を覚醒させ軸足を持つことだ。
同党の細野豪志政調会長が29日、安全保障関連法成立を振り返り、「党として安全保障の考え方は示すべきだった」、「民主党の安全保障政策を現実的にしていく観点からすると不本意だった」などと語ったという。これが政調会長の立場にあり、一部で再編新党の党首に擬せられている人物の言葉だろうか。余りに無責任かつ軟弱と言わねばならない。下に参考記事をいくつか掲げておく。
《産経 2015.9.29
民主・細野政調会長「不本意だった」 廃案重視の党方針に
民主党の細野豪志政調会長は29日の記者会見で、同党が国会審議で安全保障関連法の「廃案」を重視して臨んだことについて「党として安全保障の考え方は示すべきだった」と述べた。同党の対案の国会提出が領域警備法案1本にとどまったことを踏まえ、「民主党の安全保障政策を現実的にしていく観点からすると不本意だった」とも語った。》
《産経 2015.9.29
民主党が、櫻井よしこ氏に抗議の質問状 「岡田氏の集団的自衛権」発言は「誤解与える…」
民主党は28日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が27日のNHK番組で行った岡田克也代表らに関する発言に事実誤認があったとして、撤回と謝罪を求める近藤洋介役員室長名の質問状を送った。それによると、櫻井氏は岡田氏が外相時に「集団的自衛権は必要」と述べ、「百八十度変わった」などと言及した。同党は外相としての発言を否定し、「国民に重大な誤解を与える」などとしている。》
《J-CASTニュース 2015年9月29日
岡田代表は「集団的自衛権は必要」と発言したのか 櫻井よしこ氏が指摘、民主党は撤回求める
民主党の岡田克也代表がかつて「集団的自衛権は必要」と言っていたのかについて、ネット上で論議になっている。岡田代表はそんなことは言っていないと主張している。
岡田克也氏の発言については、まずヒゲの隊長こと自民党の佐藤正久参院議員が取り上げ、話題になった。安保法案の審議中だった2015年9月14日の参院特別委でのことだ。
かつては行使を容認しているでは、との見方が
集団的自衛権について、民主党幹事長時代の岡田氏は、03年5月3日付読売新聞に載った座談会で、「日本を防衛するために活動している米軍が攻撃された場合、日本に対する行為と見なし、日本が反撃する余地を残すのは十分合理性がある」と指摘した。そして、「今の憲法は、すべての集団的自衛権の行使を認めていないとは言い切っておらず、集団的自衛権の中身を具体的に考えることで十分整合性を持って説明できる」と述べていた。
このことについて、佐藤氏は、岡田氏は集団的自衛権は必要ないと断言しているが、かつては行使を容認しているではないかと突っ込んだのだ。さらに、岡田氏以外の民主党幹部も行使容認の発言をしているとも指摘した。もっとも、民主党からはこの指摘に反発の声が上がっていた。
そして、今度は、こうしたやり取りが一部で報じられたことを受けてか、ジャーナリストの櫻井よしこ氏も、岡田氏の過去の発言を持ち出した。
15年9月27日放送のNHK「日曜討論」で、櫻井氏は、「岡田さんがね、かつては『集団的自衛権は必要です』と民主党政権のときの外務大臣として言った」と述べたのだ。
櫻井氏は、30日中に回答と取材に答える
これを受けて、民主党は9月28日、ホームページ上で櫻井よしこ氏の発言に抗議する声明を出した。
そこでは、岡田克也氏は、外務大臣として「集団的自衛権は必要」と言ったことはないと全面否定した。また、櫻井氏が番組で「民主党が共産党と組む」と選挙協力のことに触れた発言について、岡田氏は会見などで否定的な考えを示していると反論した。
櫻井氏に発言の根拠を示すよう求めるとともに、発言内容は事実無根だとして撤回・訂正して岡田代表や民主党に謝罪すべきだとした質問状を近藤洋介役員室長名で送ったことを明らかにした。30日までに書面での回答を求めている。
岡田氏は、読売新聞の座談会発言については、17日のブログで、その真意を説明している。
座談会では、佐藤氏が取り上げた発言に続いて、「ただ、日本を守るため公海上に展開している米軍艦艇が攻撃された場合という限られたケースなので、むしろ個別的自衛権の範囲を拡張したと考えた方がいい。集団的自衛権という言葉を使わない方がいい」と述べている。岡田氏は、そのことを指摘して、「発言の一部を切り取った捏造」だと佐藤氏を批判した。
民主党からの抗議について、櫻井氏の事務所では、30日中に回答し、ホームページなどで公開する予定だと取材に答えた。
ネット上では、岡田氏発言の真意について、「むしろ『制限しろ』という議論」「個別的自衛権でと言ってるだけだろ」と理解を示す声もあった。しかし、「集団的自衛権と何が違うんでしょうか?」「重要な時に見事なブーメランになっちまったな」と揶揄する向きは多かった。》