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2016.02.01 (月) 印刷する

慰安婦回答での外務省の抵抗と拉致の既視感 島田洋一(福井県立大学教授)

 本日(2月1日)の産経新聞に櫻井よしこ国基研理事長が、《祖国の名誉のために闘わぬ外務省に「性奴隷の国」からの名誉回復は任せられぬ》と題した委曲を尽くした一文を寄せていた。
 2月15日からの国連女子差別撤廃委員会(ジュネーブ)を前に、政府が一旦、《クマラスワミ報告書をはじめ国際的対日非難の勧告に、「一方的で裏打ちのない内容が記載され」たと反論し、客観的事実に基づく日本理解を求めるしっかりした内容》の回答書を用意したものの、昨年末の日韓合意を受けて、《「強い」表現の反論では国内の強硬論と向き合わざるを得ない尹炳世外相がもたない》と外務省が巻き返しに出、結局、かなりの事実について文書化せず口頭説明に留める「折衷案」で落ち着いたという。
 いかにも外務省的な先制降伏・事なかれ姿勢だが、このうち「尹炳世外相がもたない」云々の部分には、別の意味で既視感があった。
 第一次小泉訪朝後、「一時帰国」した5人の拉致被害者が、本人たちの意思、および有志の働き掛けで、日本に留まることになった時、田中均局長(当時)ら外務省の幹部は、彼らを早く北に戻さないと「ミスターXがもたない」と筋違いの議論で抵抗した。
 あの時もし5人を北に戻していれば、「朝鮮の懐に抱かれて暮らしたい」と記者会見させられ、外務省的には「一件落着」となったわけだろう。一方、本人、家族の人生はもとより、日本国の名誉も決定的かつ回復しがたい打撃を受けたであろう。犯罪被害者を犯人の元に送り返すほど愚かで卑小な国が、どのようにして「国際社会において名誉ある地位を占め」るのか。
 尹炳世やミスターXなど、韓国・北朝鮮にとっても、日本にとっても単なる捨て石に過ぎない。捨て石を如何に有効に使うか、大局を見据え、将来を見据えて国益を図る感覚がいかに外務省には欠けているか、そのことがまた明らかになった。