12月21日正午のNHKニュースでおかしな表現が2点あったので指摘しておく。
1つは拉致被害者家族の衆院特別委員会での証言を報じる中で、「拉致問題は今年、事件発生から40年が過ぎた」とした部分である。正確には、横田めぐみさんらの拉致(1977年、当時13歳)から40年目というだけで、それ以前にも拉致事件は起きている。例えば1963年に、当時13歳の中学生だった寺越武志さんも叔父2人とともに海上で拉致された。
武志さんは、その後消息が分かって訪朝した家族らに対し、「自分は拉致されたのではなく、北朝鮮の漁船に助けられた」と話している。そのため政府はいまだに拉致と認定していないが、状況からみて拉致事件であることは明らかだ。
こうした政府の対応にも言えることだが、13歳の男の子の拉致を放置したまま(武志さんは北朝鮮での生活をなお強いられている)、13歳の女の子の拉致を日本は絶対許さないと主張しても説得力を欠くだろう。
●印象操作が過ぎないか
NHKが被害者家族の証言を大きく取り上げたこと自体は評価するが、上記の点はやはり事の本質に関わる誤りと言わざるを得ない。北朝鮮による拉致は、その建国以来の一貫した「政策」である。70年代後半に突如始まったものではない。詳しくは別サイトに掲載した拙稿を参照頂きたい(「今後も起きうる北朝鮮による拉致」)。
おかしな表現の2つ目は、トランプ大統領が「歴史的な勝利」とする税制改革法案が米議会で可決というニュースの中で出てきた。「市場関係者や産業界からは歓迎する声が上がる一方、国民の間では批判の声が多い」というのである。
減税だけでなくオバマケアへの加入義務廃止なども含む複雑な法案だけに、賛否が様々にあるのは当然だが、今回盛られた内容を概ね公約として与党共和党は上下両院で多数を得ている。「国民の間で批判が多い」という括り方には印象操作の手を感じざるを得ない。産業界と国民を対立図式で捉えるのはいかにも左翼的である。
NHKのアメリカ報道は、反トランプを露骨に押し出す米主流メディアの受け売りである場合が多い。今回もその例に違わなかったようだ。