22日の「ろんだん」で「米の中距離核戦力(INF)全廃条約離脱表明を歓迎する」旨を書いた。日本は当然のことながら、INF全廃条約で禁止されている射程500km以上の陸上配備ミサイルは大気圏外を通過する弾道ミサイルはもちろん、大気圏を通過する巡航ミサイルも保有していない。
政府・自民党は2004(平成16)年の16大綱(中期防衛力整備計画)策定で、射程300kmの巡航ミサイルを装備しようとしたが、連立与党の公明党が「専守防衛」に背くとして反対し、潰れた経緯がある。
●「持ち込ませず」の非現実性
韓国ですら射程1500kmの巡航ミサイル玄武-3Cを保有しているのに、日本が保有する巡航ミサイルは2012年に調達を開始した12式地対艦ミサイルの百数キロが最長の射程である。平成30年度予算に計上された航空機搭載の巡航ミサイルの射程がノルウェー製で500km、米国製で900kmである。
米国が中国や北朝鮮のINFに対抗する為、同様のものを陸上に配備するとしたら、日本か韓国あるいはグアム島になるであろう。グアムは米領だから問題ないとして、文在寅政権の韓国は配備に同意しないだろう。
米艦艇の巡航ミサイルに搭載可能な戦術核にしても、日本に寄港する際、事前に洋上でどこかに移し替えることは非現実的である。そもそも米国の拡大抑止によって守られている日本が、その核を「持ち込ませない」というのは身勝手な要求ではあるまいか。
●中国の台頭に先手打つ狙いも
戦前は海軍に関してワシントン・ロンドン軍縮条約があったが、1938年からは制限なき軍艦建造競争の時代に突入した。結果的に経済力に勝る米国に日本は太刀打ちできなかった。
冷戦末期、米レーガン政権はINF全廃条約をソ連と締結する一方で戦略防衛構想(SDI)という大軍拡を行った。現トランプ政権の軍拡を彷彿とさせる。当時のソ連も負けじと対抗したが、米国との経済力の差から崩壊に至る。
ソ連時代より遥かに経済力で劣るロシアが米国に対抗しようとしても無理であり、中国も現在の国内総生産(GDP)は米国の3分の2程度に過ぎない。逆に言えば、トランプ政権下の対中強硬姿勢は、中国の経済力が米国を凌駕する前に叩いておこうとする米国の戦略かもしれない。