1月29日、米国家情報長官が『全世界的な脅威査定(Worldwide Threat Assessment)』を公表した。その中で地球的規模の脅威として最初に出てくるのがサイバー攻撃であり、疑惑国家として真っ先に名指しされたのが中国である。14頁には、中国の技術開発戦略として米政府が主導すべき長期的な10項目の重層的な技術取得手段が図示されている。昨今の米中貿易協議でも、米側の最大の狙いは中国による知的財産権の盗取防止である。
●レールガンでも盗用し先行
米CNBCテレビは30日、米情報機関筋の情報として「中国が火薬を使わずに電磁エネルギーで砲弾を超音速で発射する艦載レールガンを2025年までに配備するであろう」と報じた。
レールガンは電力さえあれば無尽蔵に攻撃できる。また超高速で砲弾を発射できるのでミサイル防衛にはうってつけの兵器である。中国は、米国が先行していたレールガン開発をサイバー空間から盗取した可能性が高い。米国としては、中国が後発の利を生かして先に実用化してしまうのではないかと危機感を強め、メディアを通じてリークしたのではないか。
数年前にも「中国はオーストラリアから最新鋭ステルス戦闘機F35の技術を盗取した可能性が濃厚」とした豪紙報道があった。同盟国のサイバー・セキュリティーが不十分なら、米国の軍事技術は簡単に盗取されてしまう好例である。日本もF35だけでなく、弾道ミサイル防衛の有力な手段として導入予定の地上配備型のイージス・アショアの機密保持についても余程気をつけなければなるまい。
●甘い日本の先端技術管理
2月1日には米アップル社に働く、中国人技術者が自動車運転技術の機密を盗んだ疑いで逮捕されたとの報道があった。こうしたことは日本でも起きている。昨年8月20日付の「ろんだん」にも書いたが、2007年に愛知県にある自動車部品メーカー大手「デンソー」に働く中国人が機密の技術情報を盗み逮捕された。
事件後、危機感を持った経産省が「技術情報等の適正な管理の在り方に関する研究会」を15名の専門家で発足させた。筆者も委員として毎月1回の会合に出席した。そして2009年に「不正競争防止法の一部を改正する法律」が成立したが、驚くなかれ、それまでは物品の窃盗に対する刑罰はあっても情報を盗むことについては明確な処罰がなかったのである。
何年か前には、日本が開発した新幹線の技術を川崎重工が中国の巨大市場をあてこんで供与してしまったため、中国は独自開発と偽って低価格で世界に売り始めた。中国の知財盗取に対しては腰を据えた対策が必要だ。