公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2020.04.20 (月) 印刷する

テレワークでなく在宅勤務と言え 島田洋一(福井県立大学教授)

 3月26日付の「ろんだん」に「片仮名語の『感染拡大』にも歯止めを」と題する一文を寄せた。ところが政府主導の感染拡大は一向にやまないようだ。
 例えば政府が、企業に強く実施を求める「テレワーク」である。普通に「在宅勤務」と言えば誰でも分かるが、テレワークと聞いて即座にピンとくる人がどれだけいるのか。テレは「遠く」を意味する古代ギリシャ語のteleに発し、西洋語で「距離がある」を意味する接頭語として使われるが、日本で常識となっている知識ではない。

 ●政府は無批判に使うな
 総務省ホームページにある「テレワークの推進」と題した説明文を見ると、「テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。また、テレワークは、ワークライフバランスの実現…」云々と説明自体にまた片仮名語やアルファベット略語が頻出する。ICTがInformation and Communication Technologyの頭文字を繋げた略語と即座に理解する人もやはり少数だろう。
 テレワークと聞くと、自宅にパソコンと高度な通信環境および安全に動かす知識と技量がない限り無理な勤務形態で、そうでない自分は危険を押して出勤せざるを得ないのかと感じる人も多い。非常時においては、誰もが即座に理解できる言葉で呼びかけ、漠然たる不安を取り除いていくことが極めて重要だ。
 自分は付いていけないのではないかとの不安をことさら煽るような片仮名語を、特に政府が無批判に用いるべきではない。