6月22日公示される参議院選挙に向け、各党の公約が出揃ったが、政権与党の安全保障に関する公約を見てみると、国民世論の動向よりも周回遅れのような気がする。岸田文雄総理大臣は16日、テレビ朝日の番組で「核共有」に関して慎重な姿勢を示すとともに、先月のNHK番組でも歴代政府の防衛政策である「専守防衛」を見直す考えがないことを改めて示したが、これも国民世論の動向からはかけ離れている。
「専守防衛見直し」が半数超す
5月に行われたJNNの世論調査では、専守防衛を見直すべきとした世論が52%であるのに対し、見直すべきではないとする割合は28%にとどまった。
これに対し、自民党の安全保障調査会(会長・小野寺五典衆議院議員) が4月に出した「わが国の防衛力の抜本的強化を求める提言」では、いまだに「専守防衛の考えの下」としている。
また、3月の産経・FNN合同世論調査では、「核共有すべきではないが、議論はすべきだ」とする意見が63%に上った。
ところが同じ3月、自民党の宮澤博行国防部会長は「核共有ではなく拡大抑止のあり方について議論を進める」「唯一の核被爆国として核廃絶を主導する責務があり、その理想、夢は絶対捨ててはいけない」と述べるなど、核共有の議論を事実上封じている。
自衛隊の憲法明記も公明は及び腰
先月行われたNHKの世論調査によれば、憲法改正を必要とした割合が35%に上り、必要ないとした割合は19%であった。また、戦争の放棄を定めた9条を改正する必要があるとする割合は31%で必要なしの30%を上回った。
しかし、政権与党である公明党は依然として専守防衛の下、9条堅持で、自衛隊の憲法への明記は「引き続き検討を進めていく」としているに過ぎない。
今回のロシアによるウクライナ侵略を見て、国民の意識は大きく変わっている。すなわち、専守防衛では国を守れないとの思いが強くなり、ロシアの核使用発言によって西側の軍事支援が抑止され、それを見ている中国は台湾有事で核使用を仄めかすかもしれないと考え始めている。現に、日本が台湾有事に一兵であれ派遣したら中国は日本に核攻撃すべきとする中国国内の主張がYouTubeで出回っている。
問題はその時、米国は本当に我が国に核の抑止力を提供してくれるのか、ということだ。口先だけの声明ではなく、実効性を持って今以上に米核戦力を我が国に引き込むにはどうしたら良いのかを議論をするのは当然ではないのか、ひいては戦力の不保持を明記した憲法9条を戴くだけで国は守れるのか―。こうした国民の意識変化に目をそむけ、現政権は古色蒼然たる過去の安全保障策に引き摺られているということはなかろうか。