2016年9月の記事一覧
日韓合意はやがて反古と化す 呉善花(拓殖大学教授)
昨年12月28日に日韓両政府が結んだ「従軍慰安婦問題を最終かつ不可逆的に決着させる」日韓合意は、必ずや反古と化すだろう。すでに最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)代表は同日の党最高委員会議で「国会の同意がなかったので無効」と宣言し、同党の李鐘杰(イ・ジョンゴル)院内代表も記者団に「わが党は今回の交渉について、現在はもちろん、今後、政権を執ることになったら、なかったことにする」と語って...
規制改革こそが成長を促す、TPPを起爆剤に 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
黒田東彦日銀総裁が、異次元の金融緩和政策を導入してから既に3年半が経過した。この政策転換の結果、一言で言うならば、円安をもたらして株価を上昇させたが、実体経済には影響を与えることができなかった。 それどころか、今度は総括的検証の結果として、世界でも異例といわれる中央銀行による長期金利の操作という未知の領域に踏み込んだ。異次元の金融緩和政策と同様、肝心の目的である資金需要の拡大にどれほど効果が...
憲法に自衛隊の存在明記を、国民運動にいまこそ 西岡力(東京基督教大学教授)
私は初めての憲法改正にあたり、憲法9条の一項と二項を分離し、二項のみを改正して自衛隊の存在を憲法に明記すべきという提案をしている。 すでに産経新聞の正論欄コラム(8月16日付)に「自衛隊を憲法に明記する発議を」と題する拙文を寄稿し、「憲法の平和主義と軍の保持が『並存』するのは世界の常識だ」と述べた。そこでは、憲法9条一項の平和主義規定は、実は日本国憲法の特徴ではなく、国連憲章と世界の多くの国...
貿易の対中依存を減らせ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米政府系シンクタンクであるランド研究所が、『中国との戦争(War with China- Thinking Through the Unthinkable)』という報告書を最近出版したので読んでみた。最後のリコメンデーションで最も印象に残ったのは「中国からの重要物資への依存をできるだけ少なくする」という指摘である。 2010年に沖縄県の尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船...
日韓の今後、大事なのは日本が強くなること 荒木和博(拓殖大学海外事情研究所教授)
北朝鮮のミサイル発射・核実験などで日米韓の連携が重要視されているが、一方で今年2月、韓国では慰安婦問題を全く事実無視で描いた映画『鬼郷(キヒャン)』が封切られ、300万人を超える観客を動員した。昨年末の日韓合意で関係改善に向かうのではないかとの期待もあったが、結果的にはほとんど状況は変わっていない。これから日韓関係はどうなるのだろう。あるいはどうすべきなのだろうか。 ここでは字数の限界がある...
スターウォーズへ準備着々の中国宇宙開発 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国は先月、暗号解読が不可能な世界初となる量子通信衛星を打ち上げたのに引き続き、9月15日夜には、無人宇宙実験室「天宮2号」を打ち上げた。天宮2号は、10月に打ち上げ予定の宇宙飛行士2人が乗る有人宇宙船「神舟11号」と宇宙空間でドッキングさせる予定である。 ドッキングとは安全に衝突させることであり、急激に衝突させれば過去何回も中国が実験してきた衛星破壊になる。中国がドッキング技術を向上させて...
早急にTPPを批准し、米国に圧力を 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
日本は、2013年3月に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明し、同年7月から、オーストラリア(豪州)、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド(NZ)、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの11か国と交渉を始めた。日本の参加から約4年に及ぶ交渉は、2015年10月5日に大筋合意に至り、2016年2月4日にはNZにおいて署名式が行われた。 TPPは、マク...
中朝関係悪化で「拉致」先行解決の期待も 西岡力(東京基督教大学教授)
9月9日、北朝鮮が5回目の核実験を行った。金正恩政権になって3回目であり、今年だけでも1月に続き2回目だ。 筆者は、金正恩が5月の労働党大会に合わせて核実験を行う準備をしたが、中国共産党の強い反対を受け、延期したという以下のような情報を入手している。 「米国を協議に引き出すため、(北朝鮮は)もう1回、核実験をやろうとしたが、中国が核実験をこれ以上1回でもすれば、北朝鮮を米国が攻撃しても、...
度重なる北のミサイル発射の軍事的狙い 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮が5日、西岸から再び日本の排他的経済水域に3発の弾道ミサイルを発射した。地上からの発射としては8月3日の2発に引き続く複数発射である。 政治的な意味合いは別として、軍事的には1目標に異なる発射源から同時に複数の弾道ミサイルを到達させ、相手の対応を困難にする訓練を行っているものと思われる。北朝鮮が6日に公表した動画を見ると、複数の移動式ランチャーから時間差を持って発射していることが判る。...
「エアシーバトル」は後退したといえるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
2010年5月に米国防総省はエアシーバトル(ASB)構想を発表、2011年8月の国防総省内にASB室を立ち上げ、2015年1月にはその業務が統合参謀本部のJ-7(統合戦力開発部門)に移管された。ASB構想に深く関わってきた戦略予算査定研究所長のアンドリュー・クレピネヴィッチ氏とは、私が大学院で彼の授業をとった関係から、訪米の度に意見交換を行っており2010年の公表以前からASB構想に関しては彼か...
「官民対話」より国内投資環境の改善が先だ 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
国内は元より、国際通貨基金(IMF)などの国際機関からもアベノミクスの限界が指摘されている。しかし、相変わらず政府は大規模な経済対策を、日銀は金融緩和政策の一層の深堀効果を主張し、一向に政策を見直す兆しはない。それどころか、アベノミクスの目指す経済の好循環を妨げているのは、不十分な賃上げと低調な民間設備投資にあるとして、「官民対話」と称し、民間企業に圧力をかけ続けている。 財務省が9月1日、...